【何観る週末シネマ】社会風刺の冒険的話題作品『クラブゼロ』監督に直接インタビュー
カルト宗教に関してかなりリサーチをした
ーーミス・ノヴァクが小さい祭壇?でお祈りをしているシーンがありますが、これを観たとき、個人的にジャック・ニコルソンの『さらば冬のかもめ』(1973)の日本っぽい変な新興宗教が登場するワンシーンを思い出しました。全体的なものとしては、極度な菜食主義者が元になっているとは思うのですが、この信仰の対象”クラブゼロ”にモデルや着想元はあるのでしょうか? すみません、その作品は観ていません。ただ今回、カルト宗教に関しては、当事者にインタビューをするなど、かなりリサーチしました。ただし今作のように、食べものに関するカルトというのは存在していなかったため、直通するようなベースはありません。 しかし、どのカルトにも共通している側面というのはありますから、それらは取り入れています。 例えば、入信の際の説得力は理にかなっていて、誰もが共感し、理解するような思想を受け入れるところから始まりますが、いざグループに入って、集団心理によって、思想が過激化していくことになりますが、この手法、戦略というのは、多くのカルトが取り入れているものです。 ーー今作の場合、ミス・ノヴァクのように、服装が小綺麗な人に、ある種の狂気を感じるのですが、衣装への拘りがあれば教えていただきたいです。 今回の衣装は、私の姉でもあり、今までの作品を通しての良き理解者、パートナーでもあるターニャが担当しています。そして、制作に入って一番初めにアイデアのセッションをするのもターニャです。ターニャが脚本を読んでくれたあとに、ムードやスタイル、キャラクター、デザイン、映画の全体像などを肉付けしていくアイデアをたくさん出してくれました。 衣装に関しては、リハーサルのときに役者とキャラクター造形を話し合うまえに、まず着てもらい、衣装による物理的なインパクトを見ていきました。まず外側から土台を作っていったというべきでしょうか。 具体的に言うと、ミス・ノヴァク(ミア)の場合は、かっちりとした衣装の方が、顔や動き方と合わせることで、キャラクターとしてしっくりきました。そのためドレスやスカートといった衣装にはなりませんでした。それでいて、ジャケットであれば、肩幅が大きく、強さが強調されるものを選びました。戦場に向かう戦士や兵士のようなイメージです。 ーー本編の後半部分に触れる質問です。エルサがゲロを食べるシーンがありますが、あれは本当に食べているのでしょうか?フェイクであれば、何を食べているのか教えていただきたいです。 もちろん本物に吐いているものを食べているわけではありません。しかし長回しで撮りたかったため、一度口から出して、それを再度食べる行為に対してはお願いしました。それの正体についてですが、穀物を混ぜてドロドロにしたオートミールのようなものを役者の好きなフレーバーにしました。 ーー今年の6月に来日された際に、今後の作品の参考になる点や、インスピレーションなどを得られたという体験、経験というのはありましたか? 今回は京都にも行きました。観光客向けのものだったのですが、いわゆる”日本らしい”もの体験パックみたいなものに参加しました。ディープな部分に触れるものではないにしても、そこで能や音楽、お茶といった伝統芸術を見たり、体験したりしました。 とくに音楽に関しては、西洋的なメロディーとは違った、モノトーン的な側面や、おごそかな感じ、何より音の使い方というのが私には響き、改めて日本の古典音楽が好きだと気づきました。また能のように、フィクションとしてのキャラクターではなく、その原型部分にアクセスする考え方もおもしろいと感じました。 ーーインタビューありがとうございました。 ▽『クラブゼロ』作品情報 【ストーリー】 名門校に赴任してきた栄養学の教師、ノヴァク。彼女は“意識的な食事/conscious eating”という、「少食は健康的であり、社会の束縛から自分を解放することができる」という食事法を生徒たちに教える。無垢な生徒たちは彼女の教えにのめり込んでいき、事態は次第にエスカレート。両親たちが異変に気づきはじめた頃には時すでに遅く、遂に生徒たちはノヴァクとともに【クラブゼロ】と呼ばれる謎のクラブに参加することになる――。生徒たちが最後に選択する、究極の健康法とは?そしてノヴァクの目的とは? 【クレジット】 出演:ミア・ワシコウスカ 脚本・監督:ジェシカ・ハウスナー 撮影:マルティン・ゲシュラハト 2023年|オーストリア・イギリス・ドイツ・フランス・デンマーク・カタール5.1ch|アメリカンビスタ|英語|110分|原題:CLUB ZERO 字幕翻訳:髙橋彩 配給:クロックワークス (C) COOP99, CLUB ZERO LTD., ESSENTIAL FILMS, PARISIENNE DE PRODUCTION, PALOMA PRODUCTIONS, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, ARTE FRANCE CINÉMA 2023 12月6日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開
バフィー吉川