選択的夫婦別姓実現へ、一刻も早い法改正案提出を-経団連が初提言
(ブルームバーグ): 経団連は10日、結婚後も夫婦がそれぞれの姓を名乗ることができる「選択制夫婦別姓」制度の早期実現を政府に求める提言をとりまとめた。政府に民法改正案を一刻も早く国会に提出するよう促している。
経団連が同制度実現を求める提言を機関決定したのは初めて。十倉雅和会長は午後の定例会見で、旧姓の通称使用で海外渡航時にトラブルが生じるなど名字を巡る問題が「企業にとってビジネス上のリスクとなっている」と指摘。「国会での侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を一刻も早く始めてほしい」と語った。
今年1月にはダイバーシティ推進委員会のメンバーが加藤鮎子・女性活躍担当相との懇談会で提言していた。
選択的夫婦別姓は、1996年に法制審議会が導入を盛り込んだ民法の改正要綱を答申したが、自民党内の意見がまとまらず、法案は提出できないままになっている。支持母体の一つである経団連の提言は推進派にとって追い風で、中断していた党内議論の再開につながる可能性もある。
自民党の推進派議連の井出庸生事務局長(衆院議員)は、提言は「多くの事業者や企業が制度改正が必要不可欠と判断」したということだと指摘。賛成派にとっても反対派にとっても「大きなインパクト」となると述べた。
民法では結婚の際に、夫か妻どちらかの姓を選択することを定めている。国立社会保障・人口問題研究所が2022年に実施した調査によると、現在配偶者のいる妻のうち「夫の姓」を名乗っている割合は 過去15年にわたり約95%で推移している。
経団連の資料によると、経済界では結婚前の姓の通称使用が定着しているが、多くの金融機関で口座を開設することができないほか、企業にとっても税や社会保障手続きに際し、戸籍上の姓と照合する負担が生じている。婚姻時に夫婦同姓しか選択できない国は日本のみとされているとし、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)が03年以降、3回にわたって勧告を行ってきたことも指摘した。