わずか中3日で何が…川崎に起こった変化 「試されている」欠場組が示した“らしさ”【コラム】
小林悠も絶賛「前線からの守備が本当によかったし、特に瀬川が素晴らしかった」
登録されているポジションは「ミッドフィールダー」。しかし、今シーズンの公式戦で先発した公式戦18試合のうち、川崎フロンターレの瀬川祐輔は実に13試合で右サイドバック(SB)を任されてきた。 【動画】小林悠も「素晴らしい」と絶賛…川崎がわずか30分で3ゴールを叩き込んだ瞬間 途中出場した試合でも、左SBに加えて「4-2-3-1」システムの2列目の全ポジション、さらに「4-3-3」システムの左右のウイングとインサイドハーフ、そして3バックにスイッチした場合の左右のウイングバック(WB)でプレーしてきた軌跡は、稀代のマルチプレイヤーに与えられる勲章といっていい。 ただ、開幕直前の2月に30歳になった瀬川が、もっとも強くこだわっているポジションがある。中国の上海海港をホームのUvanceとどろきスタジアムに迎えた、5日のAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)リーグステージ第4節。最前線のFWで今シーズン初先発を果たした瀬川が、試合後にポツリと漏らした。 「うれしかったですね。自分が一番生き生きとプレーできるポジションだと思っているので」 身長170センチ体重67キロと小柄な身体から、ピッチ上の誰よりも真っ赤なエネルギーを放ち続けた瀬川が、いかに躍動感に満ちあふれていたか。念願のポジションで先発できた男の胸中は、リザーブとしてベンチから上海海港戦の前半を見つめた37歳のベテラン、FW小林悠が目を細めながら瀬川に言及したコメントが物語っている。 「前線からの守備が本当によかったし、特に瀬川が素晴らしかった。前からあれだけ気を利かせてチェックしてくれると後ろの選手たちも狙いやすいし、強気に出られる。あいつはずっと同じプレースタイルを貫いてきたし、努力してきた姿も見てきた。ましてやゴールも決めてくれて、本当にうれしかった」 どのポジションを任されようが、もちろんハードワークを貫き通す。それでもピッチ上から見える、いつもとは異なる景色が瀬川の背中をより強く押し続けた。開始わずか3分。DF佐々木旭のロングパスに、右斜め前へ抜け出した瀬川を倒した右SBのワン・シェンチャオに、いきなりイエローカードが提示された。 瀬川は「相手のサイドバックの裏が空くのは、事前にわかっていたので」と狙い通りだったと明かす。 「味方のボールホルダーがフリーであれば、裏へ抜ける必要もそれほどない。対照的に相手のプレッシャーを受けていて、味方につなげないのであれば、最終手段として前へ蹴る場面もある。その判断に対して、少しでも僕がヘルプしてあげなきゃいけないし、試合を通して、味方のクリアボールをそう簡単にはクリアにしない、という意識ではいました。フォワードは点を取るだけじゃなくて、周りのサポートもしなきゃいけないので」 献身的な姿勢は、瀬川にとって今シーズンの公式戦で3ゴール目となる追加点も導いた。MF家長昭博のボレーで先制した1分後の前半13分。FWエリソンが放ったシュートを、相手ゴールキーパーが弾いた直後だった。 自軍のゴール前にいた上海海港の選手たちの大半が足を止めていたなかで、エリソンのシュートが何らかの形でこぼれてきた場合に備えて、前へと詰める作業を怠らなかった瀬川の目の前にボールが転がってきた。 「プレッシャーはまったくなかったですね。絶対に決められると思いましたし、シュートをふかさないとか、気をつけるところだけを気をつけて、あとは丁寧に押し込むだけでした」 右足のワンタッチシュートをゴール中央へ押し込んだ瀬川は、前半33分に右SBのファンウェルメスケルケン際が決めた3点目にも関わった。ロングボールに抜け出したエリソンがペナルティーエリア内の左でボールをキープし、さらにマイナス方向へグラウンダーのパスを送った直後だった。