敵機に逃げられる!?「じゃあ戦闘機を垂直に打ち上げよう!」ドイツが作った驚愕の迎撃機 もはや“有人対空砲”
例えるなら「有人対空砲」か「有人ミサイル」か
2025(令和7)年は蛇年です。ヘビと言えばその風貌と優れた肉食の爬虫類であることから、ヘビの名前を冠する軍用機や武装なども珍しくありません。第二次世界大戦中、そうしたヘビの名前を冠する機体のなかでもかなり奇抜な機体が誕生しました。わずか2分弱で高度1万2000mを目指すというドイツの戦闘機Ba349「ナッター」です。 【ほぼミサイルだ!】これが打ち上げ前の「ナッター」です(写真) 「ナッター」とは、蛇の一種であるナミヘビのドイツ名です。この戦闘機の大きな特徴は、ピストンエンジンやジェットエンジンではなく、現在ロケットやミサイルの技術で利用されているロケットエンジンを搭載している点です。つまり同機はロケット戦闘機になります。 戦時中、ドイツ軍はロケット戦闘機Me163「コメート」を実用化しました。同機は優れた上昇性能を持っていたものの、その飛行には大量の推進剤が必要なため、極端に航続距離が短くなることが問題でした。高高度からの一撃離脱戦法に連合国軍の爆撃機隊は手を焼いていたものの、同機が飛行場の周辺でしか戦えないとわかると、配備された飛行場を避けて通るようになり、じきに目立った戦果は挙げられなくなってしまいました。 また、戦闘終了後の帰還にも大きな問題を抱えていました。燃料を使い切ってしまうため、滑空して飛行場に行かなければならないうえに、ソリのようになった胴体で滑るように着陸させる必要があったからです。 その問題を解決しようと考案されたのがBa349「ナッター」です。同機は、現代の宇宙ロケットのように、ほぼ垂直に射出する方式を採用していますが、これは爆撃機に逃げられる前に速やかに迎撃するためです。ロケットエンジンで垂直に打ち上げる方式なので、主翼は揚力を生み出す必要がないことから非常に小さく、尾翼は姿勢を制御するために十字型に取り付けられており、戦闘機も速度で振り切るのでドックファイトなどを想定した機動性は考慮されていませんでした。