「踊る」青島と和久さんのモデルは“ハリウッドの名バディ” 亀山Pが明かす大ヒットは「何もないお台場が舞台だったからこそ」
「謎解き」を突き詰めても「古畑任三郎」には敵わない
一方で、陸の孤島であるがゆえに問題がないわけではなかった。 「お弁当を頼むにしても、『そんな場所まで運べません』と断られることも少なくなかったし、タクシーもまったく止まっていない。お台場の存在が認知されていないから、タクシー運転手ですら『それってどこですか?』と言われてしまうほどです」 まだほとんど誰にも知られておらず、建物すら少ない。。ということは、この地域に暮らす住人も当然少ないことが予想される。人が少ないのだから、大げさな事件は起こらない――。こうして湾岸署の設定はできあがっていった。 「何もないわけですよね。つまり、毎回殺人事件が起こるような署ではない。ただ、所轄には刑事課はあるし、地域課や交通課といった部署もある。こうした働く人たちを躍動させながら刑事ドラマを作ろうと。くしくもフジテレビには、一人で事件を解決してしまうスーパー刑事である『古畑任三郎』がいた。謎解きをしても、古畑さんにはかなわないですから(笑)」 また、犯人を追うようなドラマにすると、「犯人(役)にスポットライトが当たるため、既視感のある刑事ドラマになってしまうと危惧した」とも付言する。 「動機や背景を無視することができなくなるため、どうしても犯人のボリュームが大きくなる。そうなると、織田さんをはじめレギュラー陣が霞んでしまう。あくまで主役は織田さん演じる青島俊作です。その青島君を引き立てる存在は犯人ではない、他の何かが望ましい。たどり着いたのが、4万人以上いる警視庁、その中でもエリートと言われるわずか200人ほどのキャリア組だった」
深津絵里のモデルはジョディ・フォスターだった!? では室井のモデルは――?
実は、「踊る大捜査線」に登場する青島たちにはモデルがいる。 「青島君といかりや長介さんが演じた和久(平八郎)さんは、『セブン』のブラッド・ピットとモーガン・フリーマン。また、深津絵里さんが演じるすみれさんは、『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスターをイメージしました。すみれさんの髪型がボブなのは、クラリスをモチーフにしているからなんです」 では、柳葉敏郎扮する室井慎次は誰がモチーフなのか――ということだが、「そもそも室井のイメージは当初は違うものだった」と亀山は明かす。 「もっと融通が利かないコワモテの人物像だったのですが、そうしてしまうと青島君の敵が、その人物だけに向いてしまってつまらないなと。彼らが対峙しているのは“個”ではなくて“組織”ですから、相対する存在に血を通わせたかった。その結果、たどり着いたのが、『クリムゾン・タイド』のデンゼル・ワシントン演じるロン・ハンター少佐だった。エリートである一方でやっかみも受ける。それでも信念のために動く。柳葉さんが演じたらハマると思った」 大きな事件は起きない。だが、苦しむ人がいる以上、事件は大小では測れない。そのことを訴える青島と、大小は存在すると唱える室井。所轄対本庁という二項対立を作ることで、何もなかったお台場という場所に物語が浮かび上がった。 その上で、「踊る大捜査線」を制作するにあたって、“絶対にやらないこと”を決めたという。名作刑事ドラマと名高い「太陽にほえろ!」でやってることは、「すべてやらない」。 「僕たちがやろうとしていることは、組織の中で働く人々の物語です。組織ですから、さん付けはもちろん、〇〇管理官、△△課長と呼ぶわけですよね。だから、あだ名は一切作らなかった。犯人に焦点を当てることもなければ。刑事たちは犯人を捕まえて戻ってきても、ほめられることすらない。捕まえることは偉いことではなく、仕事である以上、当たり前なわけですから」