<ボクシング>長谷川が大阪城ホールに残した感動
<ボクシングIBF世界スーパーバンタム級タイトル戦 4月・23日 大阪城ホール> 王者 キコ・マルティネス(スペイン) TKO7回1分20秒 挑戦者・13位 長谷川穂積(真正) 1万人以上「穂積!頑張れ!」「穂積!」の大合唱が大阪城ホールを包む。ボクシング界を支えてきたレジェンドが、ふらふらになりながらも、危険極まりない打ち合いをやめない。28歳のチャンピオン、キコ・マルティネス(スペイン)の固い左フックを浴びた長谷川は、気持ちを肉体が裏切ったかのようにグラグラと膝から崩れてキャンバスに両手をついた。一度は、悲鳴と共に立ち上がったが、足元はおぼつかなかった。試合は、続行したが、再度、左からのかぶせるようなフックを浴びると、そのまま崩れるようにして倒れてレフェリーが試合をストップ。ほぼ同時に青コーナーから投げられたタオルが宙を舞った。長谷川は、自分一人の力でコーナーに歩いて帰れないほどのダメージを負った。 「穂積、ありがとう」 「頑張ったぞ!」 口の悪い関西のファンは、輝きながら散った敗者への賛辞を惜しまなかった。この壮絶な7ラウンドの戦いが長谷川のラストファイトであることを知っていたのだろう。 スタートは長谷川のペースだった。右、左と動きながら、目で追えなくなった瞬間に左を叩き込む。そのスピードとサウスポー特有のタイミングにマルチネスは面食らっていた。腰をかがめマルティネスは、距離をつめながら中へ。左右のフックをぶん回す。そのスタイルにインファイトはタブーのはずだが、2回に入ると、長谷川はロープを背負って打ち合った。以前までの長谷川は、この場所からでも、絶妙なダッキングでタイミングを外し、左右のフックをカウンターにして打ち込み、そこを勝負の分岐点にしていた。 山下会長が「本人の性格が出た」という場面だ。 しかし、悲しいかな3年の歳月は、長谷川から感覚を奪いとっていた。思惑通りにパンチがスイを思い切り顎にもらい、手でなぎ倒すように転がされた。このダウン自体は、スリップダウンだったと思うが、その前のブローで長谷川の膝は落ちてしまっていた。「あのダウンでダメージがあった。後々響いた。動いて外す練習をしてきたが、それができなかった」(山下会長)