アール・デコの空間と鉄とガラスが時を超えて響き合う。『そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠』が開催中!
1933年に朝香宮家の自邸として建てられ、アール・デコ様式の建物で知られる東京都庭園美術館。現在、開催中の『そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠』では、主に鉄とガラスを素材とする青木野枝と三嶋りつ惠の2人のアーティストが、光に着想を得て制作したさまざまな作品を公開している。 【展示の写真】三嶋りつ惠『光の場』2019年(本館2階広間)
鉄を素材とする青木野枝とガラスを用いる三嶋りつ惠。その制作と魅力とは?
活動初期より一貫して、鉄を素材に抽象的な彫刻を製作してきた青木。工業用の鉄板を溶断して円や線のパーツを切り出し、それらを巧みに繋ぎ合わせる作品は、鉄という重厚な素材でありながらも、軽やかな浮遊感を放ち、時に雲や植物、細胞などを連想させるようなかたちを作り出している。また鉄を接合することで生まれる繋ぎ目や線からは、生命や自然のつながりを思わせるのも魅力だ。一方でヴェネツィア・ムラーノ島の工房にて、ヴェネチアン・グラスのガラス職人とのコラボレーションによって制作を続ける三嶋は、無色透明なガラスによって、光の輪郭を描き出す有機的なフォルムの作品で知られている。ガラスという固体の素材に、流動性や生命感が感じられるのも特徴といえる。
アール・デコ様式の室内空間と作品が織りなすハーモニー
アンリ・ラパンが内装設計を担当し、宮廷時代にはダンスパーティーが開かれていた本館1階の大広間を飾っているのは…?それが三嶋の『光の海』と題したガラスのインスタレーションだ。ここで三嶋は天井の格子状のフレームに配された40個の電球照明に着目すると、約40点にも及ぶさまざまな形状のガラス作品を並べている。白い光に煌めくガラスを目にしていると、かつてのパーティーの賑わいが目に浮かんでくるかのよう。そして大広間に隣接し、窓から庭園の景色も望める大客室では、青木が半球型の『ふりそそぐもの/朝香宮邸ーI』を展示。ルネ・ラリックのシャンデリアやマックス・アングランによるエッチング・ガラス扉といった、アール・デコ様式の装飾と見事に調和している。
「植物」をテーマにした作品も! ウィンターガーデンも公開中
かつて家族のプライベートスペースだった本館の2階へ。幾何学花模様の照明柱が美しい階段上の広間では、三嶋が2万2千個も連なる小さなガラスビーズを吊るした『光の場』を見せていて、ソファに腰掛けながら光の粒が辺りを照らし出す様子を楽しめる。これに続く二面彩光の明るい空間が特徴な若宮寝室では、青木が鉄とガラス、銅線を用いた『ふりそそぐもの/朝香宮邸ーⅢ』を展示。張り出し窓や宮内省内匠寮技手によるユニークな照明と呼応しつつ、室内空間へ木々が林立するかのような光景を生み出している。このほか本館では展覧会によっては閉じられることの多い、3階のウインターガーデンも特別に公開中だ。太陽の明かりが燦々と降り注ぎ、黒と白の市松模様が広がる空間に、青木と三嶋の「植物」をテーマとした作品が新たな生命の息吹を誘っている。