投手歴3年ちょっとで大学日本代表候補 仙台大の1年生左腕は「これぞ天才」という超逸材
チームメイトが語る投球理論、トレーニング知識、そのすべてが大城にとっては発見だった。そして驚くべきは、話を聞いただけですぐに体現できてしまう大城の吸収力だろう。 今秋は明治神宮大会への出場権を争う東北地区代表決定戦・富士大戦に先発。ドラフト指名選手6人を輩出した東北きっての強豪を相手に自己最速146キロを計測するなど、6回まで無失点と快投した。だが、終盤に逆転を許し、仙台大は神宮切符を逃している。この試合で大城は自身が抱える課題を認識したという。 「富士大戦は終盤にバテてしまったので、冬の課題はまず体力ですね。あと自分は筋力がほとんどないので、今の柔軟性に筋力がついてくれば体も強くなると考えています」 3年後には、金丸夢斗(関西大→中日1位)クラスの投手になっても不思議ではない。そんな感想を本人に伝えると、大城は「ありがとうございます」と言いつつもピンときていない様子だった。念のため「金丸投手の存在は知っていますか?」と確認すると、大城は正直に白状した。 「名前は知っています」 大城にとって野球は「やるもの」で、「見るもの」という感覚が希薄なようだ。バッテリーを組んだ渡部は、こんなエピソードも教えてくれた。 「大城くんから『どこの大学ですか?』と聞かれたので『青学だよ』と答えたら、『青森の大学ですか?』って返されました。ちょっと変わってますけど、面白い子ですよね」 大学日本一チームも、大学ナンバーワン左腕もよく知らない。ここまで突き抜けていれば、かえって人から愛されるものだ。また、肩書や実績にとらわれない感性だからこそ、海千山千の難敵ひしめく大学球界で力を発揮できているのかもしれない。 好投手が集まる今回の代表合宿は、大城にとって発見の宝庫だったはずだ。大城は「人としゃべるのは苦手なんですけど」と前置きしつつ、こう続けた。 「こっそり盗み聞きでもいいので、いろんな技術を吸収していきたいですね」 大城海翔が残りの大学生活でどんな気づきを得るのか。それは3年後のドラフト戦線を大きく左右するはずだ。
菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro