ノロウイルスに変異株 世界的に流行拡大か
■11月~2月に集中するノロウィルス 冬の到来とともに、ノロウイルスによる集団食中毒のニュースが聞かれるようになった。食中毒の発生は夏場だけに限らず、特に冬場にはノロウイルスによる食中毒や感染症が多くなる。日本での食中毒患者数の53%はノロウイルスが原因で、そのノロウイルスによる食中毒の70%は11~2月に集中して発生しているのだ。昨シーズン(2012-13年)はノロウイルスの新しい変異株が出現し、海外でも流行拡大の傾向がみられるなど、この冬もまた注意が必要だ。 国立感染症研究所などによると、ノロウイルスは、世界中で“急性胃腸炎”の原因として1年を通じてみられ、特に温帯地域の冬に多いとされる。日本でもかつては「腹に来た風邪」、「風邪による腹痛や下痢」などと言われた疾患の原因の一つで、口からウイルスが入ったことで感染(経口感染)する。 ■ノロウィルスの潜伏期間は1~2日 ノロウイルスに感染してから発症までの潜伏時間は24~48時間。主な症状は吐き気やおう吐、激しい腹痛、下痢、発熱(軽度)などで、「感染性胃腸炎」と診断される(感染性胃腸炎の原因にはほかに、他種のウイルスや細菌、寄生虫などもある)。ノロウイルスには特効薬がなく、水分などを補給する輸液や整腸剤などの対症療法が主だ。一般に発症後1、2日ほどで回復するが、子どもやお年寄りなどは重症化し、長引くこともあるという。 厄介なのは、ノロウイルスの感染力が非常に強いこと、症状が消えても、糞便からのウイルスの排出が3~7日間も続くことだ。ノロウイルスは糞便1グラム中に1億個以上、おう吐物1グラム中に100万個以上が存在するが、10個から100個程度のウイルスが口から入っただけでも感染するというのだ。 ■主な感染ルートについて 感染経路には、大きく、次の2つがある。 〈人からの感染〉 ・感染した人の糞便やおう吐物に触れた手指を介しての2次感染 ・糞便やおう吐物が乾燥して、細かなチリや埃(ほこり)とともに舞い上がり、体内に取り込まれる“塵埃(じんあい)”感染 〈食品からの感染〉 ・感染した人が十分に手を洗わずに調理した食品を食べた場合 ・ウイルスが下水処理施設から河川に排出され、内臓に蓄積されたカキやシジミなどの二枚貝を、不十分な加熱処理で食べた場合 口から入ったノロウイルスは、胃酸のある胃を通り過ぎて、十二指腸や小腸上部で繁殖する。そのため酸性にも強く、さらに消毒アルコールや逆性石けんにも抵抗性をもっている。