販売台数と収益性でテスラを凌駕! 決算に見るBYDの強さとこれから先の戦略
研究開発費はテスラを上まわっている
では、テスラの決算内容と比較していきましょう。まず初めに、売上と販売台数を比較すると、販売台数ではBYDはテスラの倍以上の販売規模に到達しているものの、売り上げベースでは、テスラのほうが台あたりの単価が高いために拮抗している様子が見て取れます。 次に注目するべきは粗利益率の変遷という観点です。黄色で示されたテスラは、2022年Q1を境に断続的に低下。他方で、ピンクで示されたBYDの粗利益率は断続的に上昇を続け、ついに、2023年Q2に初めてテスラの粗利益率を上まわることに成功。しかもその後は、その差をさらに広げて、直近の2024年Q2も、テスラが18.0%なのに対してBYDは18.7%と、いまだにBYDのほうが収益性が高い状況です。 また、営業利益という観点でも、直近の2024年Q2のBYDは7.24%と、テスラの6.3%を上まわるレベルです。とくに黄色で示されているテスラは、前年同四半期に実現した9.6%と比較しても大きく減少しています。 そして、もっとも注目するべきであると感じるのが、研究開発費、および売り上げに占める研究開発比率です。黄色で示されたテスラは4.2%であるものの、ピンクで示されたBYDは5.1%を実現しています。確かにQ1に記録した8.49%と比較すると、Q2は流石に落ち着いているものの、BYDの研究開発費は2022年Q3から一貫してテスラを上まわっている状況です。 つまり、現時点ではBYDのほうが多くの車両を販売しながら、粗利益率でも稼ぐ力をつけ、研究開発費でも多くの資金を投入。それでいて営業利益率でもテスラを上まわるレベルということになります。 いずれにしてもBYDは、とくにEV開発における超垂直統合のアプローチを採用することで、EVのコスト競争力をどれほど高めることができるのか。もちろんコスト低減だけではなく、最新PHEVテクノロジーのDM5.0などのEVや自動運転の最新技術にも注目するべきでしょう。 このようにして、世界最大のEVメーカーであるBYDの2024年Q2の決算内容は、競合のテスラが販売台数を落とすなか、さらに販売増加させることに成功。また、値下げ戦争下において売り上げも伸ばしつつ、その上でテスラをも上まわる収益性を確保。しかも将来への種まきである研究開発費もテスラ以上の額を計上しています。 他方で、BYDに対する懸念点が、バッテリーEVの販売の伸びの鈍化、およびプレミアムセグメントにおけるブランド力の醸成という点でしょう。これは、第5世代のPHEVシステムを搭載するPHEVの販売台数が急増していることで、バッテリーEVの伸びが鈍化しています。よって短期的には、海外でバッテリーEVの需要をどこまで喚起できるのかに注目です。 そして、プレミアムセグメントは、ファーウェイ、NIO、Li Auto、シャオミなどといったブランド力の強いEVブランドが支配しているため、BYDがDenza、FangchengBao、Yangwangという高級ブランドによって、どこまでプレゼンスを発揮することができるのかに注目です。とくにDenzaが9月から発売中のZ9 GTの販売台数には注目でしょう。
高橋 優