【西武投手王国への道】成長を後押しする外部専門家との連携「ゲームを控えてから、よく眠れるようになりました(笑)」(隅田知一郎)
【埼玉西武ライオンズ 投手王国への道】 パ・リーグを戦う西武の最大のストロングポイントである投手陣。近年、急速に力をつけてきたが、その裏には一体、何が隠されているのか。ライオンズ投手王国への道を追う──。 取材・文=中島大輔 写真=高塩隆 【選手データ】今井達也 プロフィール・通算成績・試合速報
鴻江トレーナーの門をたたいて
西武に入団して8年目の今季、低迷するチームで先発陣の柱になっているのが今井達也だ。 「今、佐々木朗希(ロッテ)の次にいい球を投げているのが今井です」 今季序盤、MLB球団のあるスカウトがそう評していたほどだ。 今井は作新学院時代の高3夏に甲子園優勝投手となり、2017年ドラフト1位で西武に入団。2年目から先発を任されるなど高い潜在能力を見せた一方、安定した投球をなかなか続けられなかった。 一体どうやって殻を破ったのか。今季2勝目を飾った4月19日の楽天戦(ベルーナ)のあと、囲み取材でカギになる言葉を残している。 「二塁ランナーがいるときが、あまり得意じゃないんですけど……」 この日、唯一の失点をそう振り返った。得点圏に走者を背負うと失点のリスクが高まるからプレッシャーを感じるのだろうか。記者に聞かれると今井はこう答えた。 「二塁ランナーがいるときが、一番立っている姿勢が崩れやすいので。専門的なところなので難しいですね」 姿勢と聞き、ピンと来て尋ねた。 ──それは鴻江(鴻江寿治)先生の教えにつながっている部分ですか? 「全部そうです」 今井は即座に首肯した。やはり、彼の覚醒と関係のある内容だ。 翌日、試合前の練習を引き揚げてロッカールームに帰る今井の横を歩きながら、前日の続きを質問した。 ──二塁走者のいるときが姿勢が崩れやすいというのは、二塁走者を見る動きはホームと逆方向になるからその影響が出るということですか? 「そんな感じです。どっちかって言うとサードとファーストのラインで、体のラインというか、軸をつくるので。二塁ランナーはセンターとホームの軸にいるので、(自分の軸が)崩れやすくなりますね」 立っている姿勢は投球動作のスタート地点であり、投手にとって極めて大事だ。今井がそこに行き着き体の効果的な使い方を深く追求し始めたのは、千賀滉大(メッツ)や菅野智之(巨人)も学んだ鴻江トレーナーとの出会いがきっかけだった。 「三軍バッテリーコーチ兼ブルペンキャッチャーの荒川雄太さんなど、鴻江(寿治)先生にお世話になった方に『行ってみたら?』と話していただいたのが始まりです」 今井は23年の自主トレ期間に鴻江トレーナーの門をたたき、同氏の理論で自分は体の右半身に比べて左半身が強い「あし体」と知った。体の使い方を見直し、同年に自身初の10勝を記録、今季初の開幕投手を託された。