【EC物流 3人のキーマンに聞く】SBSホールディングス、「SBSらしさ」で成長加速
SBSホールディングスが物流事業の成長を加速させている。荷主の獲得や倉庫の拡大、自動設備機器の運用など、グループが手掛ける各分野の深化が回り始めた。営業や事業戦略、庫内の自動設備について、EC物流の中核を担うEコマース事業推進部長の大森茂氏、グループ事業戦略部長の金子竜也氏、LT企画部長の曲渕章浩氏の3人にそれぞれの施策や動向を聞いた。 <食品や越境にも注力> ――EC物流の動向をどう見る? 大森:新型コロナを機に日本のEC化率が上昇し、その影響が営業の場にも出ている。一方、アフターコロナの現在は、動きが鈍化している印象だ。 当社は現在、大口顧客の獲得が順調に進んでいる。ただ、大手は物流コストの削減が顕著である一方で先を見据えた物流に興味を示している印象だ。人手不足やコスト、庫内の自動化設備機器の導入など、これからの物流の課題に対して取り組む当社とは比較的相性が良い。 今はEC市場も大きく変化している。特にアパレルは顕著だが、獲得の感触は良くない。背景には、主要ECモールの動きが関係していると分析している。とはいえ、化粧品や健康食品、エンタメ商材の物流は動いており、獲得も順調に進んでいる。 昨今は、食品や冷凍・冷蔵品の物流もできるようにことで引き合いが増えたが、これは当初から計画したことでもあり、ある程度の需要予測はしていた。取扱商材が拡大している今、さらに攻勢をかけていく必要がある。 金子:当社にも越境ECに関する案件や相談が一定以上出てきている。しかし、当社にはまだ完全な越境体制が整っていない現状もある。これらを解決するために、国外での物流業務を始動し実績作りを進めている。現在は、関西国際空港周辺で物流体制を整え、田空港周辺でも越境ができるように準備を進めている。 越境の対応は「SHIEN(シーン)」や「Temu(ティーム)」などの台頭が背景にある。物流側から見ても変革の機会と捉えている。 曲渕:物流倉庫の現場から見ると、庫内オペレーションなどの自動化に舵を切れるかどうか、という状況にあるとみている。 これは物流企業に限った話ではなく、昨今は大手小売企業の自社物流化も進み、各社が積極的に自動設備を導入している。資本力は注視するポイントの一つと言える。 ――EC市場の変化が激しい今、取り組むべき物流とは? 大森:まず、SBSグループ全体で取り組む必要があると思っている。われわれの事業部はEC物流がメインだが、グループ会社では物流施設の開発や配送もできる体制がある。 SBSグループ代表(鎌田正彦氏)は、良い意味で業界の商習慣を壊して新しい価値を作ろうという方針を掲げている。新しい価値が価格か、サービスなのかという具体性はこれから。ただ、他の企業が真似できないようなサービスやプライシングを将来的に当社が作っていく。 物流での新たな試みとしては、置き配に特化したサービス「SBS Ecoロジ便」が今年11月に始動した。倉庫内では自動化やロボット化が進んでいる。他の企業ではやりにくいことや機能を当社が持ち合わせているため、今後の物流のポテンシャルは高いだろう。 <ロボの感度高まる> ――御社のEC物流の動きは? 大森:営業側としては、ロボティクスの感度が高くなっている。これは、荷主側の自社ビジネスが大きく好転し、今後、2倍以上に拡大していく分岐点だと判断している。 しかし、自動化やロボの情報が先行し、情報と現場の差が生じているのも事実。自動化は点だけでは恩恵が受けられない。物量などの規模と比例する形で、設備の導入数や設備自体の性能も同様に向上していくことで自動化の恩恵が受けられるからだ。 あと5年すれば、おそらく自動化の本当の恩恵が受けられるようになるだろう。それを見据え、荷主側の感度が高まっていくと思われる。 金子:昨年に野田市の物流センターが立ち上がり、次は大阪にも同様の物流センターが立ち上がる。この準備を急ピッチで進めている。 曲渕:先ほど大森が話していた通りで、自動化は規模が必要となる。おそらく、5年後には今よりも人件費が高騰し、労働環境自体が大きく変わっていく。この段階で自動化の効力が発揮されるとみている。 さらに、自動設備は単一的な業務こそ力を発揮する。EC物流のように複数の荷主から多品種の商材が入庫される時点で、入口から出口までを完全自動化していくことが極めて難しい。 自動設備の最適化という点では、一部の倉庫で荷主や商材を分けて単一的な管理をするやり方をとっている。実際にこのやり方でロスが最小限に抑えられている。