ノーベル賞大隅氏の「オートファジー」なぜ細胞の中身を“壊す”のが大事?
――オートファジーが起こらないと、写真のように、いかにも「ゴミ」という感じがするタンパク質のかたまりができることもあるようですが、これは何が問題なのですか? かたまり自体が良くないという研究者もいれば、品質が悪いタンパク質を固めることで細胞を守ろうとしているという研究者もいます。どちらにせよ、かたまりが見えるということは、細胞の中で悪いタンパク質が増えているのは間違いないですね。 ――その「品質が悪いタンパク質」というのも我々素人にはイメージがつかず……。タンパク質って悪くなるのですか? 品質が悪いタンパク質とは、作りそこなって形がおかしくなったタンパク質や、時間が経って化学物質がくっついたタンパク質などのことです。その例としては「酸化修飾」があります。細胞の中には反応しやすい状態の活性酸素があり、これがタンパク質と化学反応を起こすと、タンパク質全体の形が変わってしまうのです。このようなタンパク質は正常に働けなくなってしまいます。 ――ちゃんと働かないタンパク質がたまるのは厄介ですね。ゴミを取り除くのが人間でも細胞でも大事なのがよく分かりました。それにしても、オートファジーというざっくりした方法で細胞が本当にきれいになるのですか?たしか、細胞の一角をランダムにぐるっと膜で囲んで、その膜のなかのタンパク質を丸ごと分解する方法ですよね?なんか、正常なタンパク質まで分解してしまって、細胞にとっても良くない気がします……。 オートファジーって、普段は少しずつしか起こりません。私たちはよく「掛け流し温泉」に例えるのですが、掛け流しの温泉って、きれいなお湯を加えながら、捨てるお湯を選ばずに少しずつ捨てていますよね。どこにゴミが浮かんでいるか分からないですから。少しずつ捨てて、少しずつ新しいものを入れたら、いつも新鮮な状態が保てますよという考え方なのです。 ――なるほど、理にかなった戦略なのですね。