【坂口正大元調教師のG1解説】位置、仕掛け、進路…C・デムーロは、日本の競馬を知っている
<坂口正大元調教師のG1解説 トップ眼> <エリザベス女王杯>◇10日=京都◇G1◇芝2200メートル◇3歳上牝◇出走17頭 C・デムーロ騎手が日本に来るようになって何年がたったでしょうか。お兄さんのミルコがいるのもありますが、さすがよく日本の競馬を知っているな、というポイントが詰まった勝利でした。 1つは位置取りです。メンバーと並びを見れば、極端なハイペースにならないことは明らかでした。序盤は初ブリンカーのハーパーが積極的で若干速くなりましたが、1000メートル通過は59秒6。前3頭は多少速くても、好位4、5番手のスタニングローズは60秒程度のミドルペースで、一番いいところでした。 もう1つは仕掛けと進路取りです。4角の下りで一気に仕掛けて、直線ではその4角を回った進路よりさらに外、馬場の真ん中へ出しました。Bコース2週目の京都芝は、午前中から内を通った馬が活躍していましたが、それでも内が荒れているのは確か。勢いをそいで内へ寄せるより、勢いのまま馬場のいい真ん中をのびのびと走らせました。日本競馬をよく知るクリスチャンの「経験」と「勝負勘」が詰まっていました。 もともと牝馬3冠の1つ、秋華賞を勝ったほどの馬です。力はありました。とはいえ、私も長年、調教師をやりましたが、1度崩れた牝馬を立て直すのは難しいものです。間隔を空けて調整し、復活させた高野厩舎の手腕にも拍手です。 1番人気レガレイラは5着でした。直線で馬の間を抜けようとした時に接触し、ルメール騎手がいったん追うのをやめて様子を見ています。大丈夫と確認して再び追いましたが、時すでに遅しでした。すんなり割っていても勝ったかどうかは分かりませんが、もっと上位だったことは確かです。スタートを出て、いつもよりいいポジションで運びながらこうなるのですから、競馬は分かりません。 2着ラヴェルは、レガレイラのすぐ外にいた4角からいい伸びを見せました。リバティアイランドに勝ったことのある実力馬を、リバティの主戦・川田騎手が見事に導きました。3着ホールネスは横一線の3着争いでグイッと前に出た、あの勝負根性に将来性を見ました。(JRA元調教師)