小林製薬「紅麹」結局何が問題なの?公表までに2カ月、謎のプベルル酸、サプリ市場に影… 「医薬品と同等の管理が必要なケースもある」と専門家
小林製薬が自社製の「紅麹」サプリメントを摂取した人の健康被害を3月22日に公表してから1カ月たった。小林製薬は当初、サプリとの関連が疑われる死者はゼロ、6人が入院したと説明していたが、電話窓口を設けると事態は一変。摂取したとみられる高齢者を中心に5人が死亡、200人以上の入院が判明し、4月18日時点で延べ約8万8千人から相談が押し寄せた。 【図】「異変に気付くのでは」製造過程で青カビが混入するイメージ
1月に症状の発生を把握しながら、公表まで2カ月超を要した小林製薬の対応のまずさが次々と露見した。原因物質として可能性が浮上した青カビ由来の「プベルル酸」には謎が多く、製造過程でどのようにして混入したのか経緯も不明だ。食品の安全性に対する不安が広がり、右肩上がりのサプリ市場にも影を落とす。社会問題に発展した今、何が問題となり、何が分かっていないのか。この1カ月の主な動きをまとめた。(共同通信=小嶋捷平、石井祐、浜田珠実) ▽なぜ2カ月も遅れたの? 小林製薬は3月22日、小林章浩社長らが大阪市で緊急記者会見し、「紅麹コレステヘルプ」など3商品の自主回収を公表した。この時点で明らかになったのは、①サプリを摂取した人から腎疾患の報告が相次いでいること、②想定しない「未知の成分」が健康被害をもたらした可能性が高いこと、などだ。小林製薬は過去にサプリを摂取したり、体調に異変を感じたりする人は、速やかに摂取を中止して相談するよう呼びかけた。
ただ、小林製薬が実際に症状の発生を把握したのは、2カ月以上前の1月15日だった。その後も複数の医師から断続的に連絡があり、2月1日時点では計5人の症状が報告された。小林社長も2月6日に把握したが、アレルギーなどを念頭に置いて原因究明にこだわり、肝心の社外公表を先送りした。独立した立場から経営をチェックする社外取締役には、公表2日前の3月20日になってようやく事態が知らされたという。 亡くなった5人のうち1人は2月に死亡したことが分かっている。もし最初に症状を把握した時点ですぐ使用中止を呼びかければ、助かった命があったのではないか。 小林製薬は自主回収の判断時期について「自社のガイドラインや弁護士の意見を踏まえて判断しており問題ない」との見解を崩していない。だが小林社長は会見で「判断が遅いと言われれば、その通りだ」とも述べている。 小林製薬が本社を置く大阪市の横山英幸市長は記者会見で「できるだけ早く製品回収や健康被害を把握するスキームをつくりたい」と話した。健康被害の拡大を最小限に食い止める新たな仕組みづくりに向け、国を巻き込んだ抜本的な議論に火が付く可能性もある。