ウォーターゲート事件との類似性も トランプ大統領がFBI長官を突然の解任
FBI長官代行は「徹底的に」捜査の継続を明言
解任されたコミー氏にかわってFBIの指揮を執るアンドリュー・マケイブ長官代行は11日、上院特別委員会の公聴会で証言を行い、「コミー氏は現在までFBI職員の間で大きな支持を得ている」と語り、ホワイトハウスのサンダース報道官による「コミー氏はFBI内部で職員からの信頼を失っていた」という発言を否定した。また、「環境や判断が変化しても、FBI職員の業務はそれらに左右されずに継続され、捜査を妨げようとする動きはありません」とも語り、捜査を妨げる動きがあれば議会にすぐに報告する姿勢を明らかにしている。コミー氏とは異なり、マケイブ長官代行は、現在の予算と人員で大統領選におけるロシアの関与を調査できるだろうとの見通しを示したが、これからも捜査は徹底的に行うと「宣戦布告」している。 サンダース副報道官は11日に「トランプ大統領が数日内にFBI本部を表敬訪問するだろう」と語ったが、その日の午後にはホワイトハウス内でFBI本部への訪問中止が決定したようだ。NBCニュースは複数のホワイトハウス高官の話として、「FBI内部で支持の高かった長官を解任した直後に、解任を行った大統領本人がFBI本部を訪問しても歓迎されることはない」という理由で訪問中止が決定したと伝えている。 トランプ大統領は11日、NBCの単独インタビューに応じ、過去にコミー氏にロシア関連の捜査でトランプ氏自身が捜査対象になっているのか尋ねたことがあると語った。「コミー氏からは捜査対象になっていないと告げられた」と語ったトランプ大統領だが、12日になって意味深なツイートを投稿している。「メディアに情報をリークする前に、ジェイムズ・コミーは我々の会話が録音されたテープが存在しないことを願っておくべきだ」。トランプ大統領は過去にコミー氏との間で交わされた会話が秘密裏に録音されていた可能性を示唆した。 しかし、これは約45年前にニクソン大統領が行った行為と同類のもので、発言の真偽が厳しく問われるのは間違いない。12日にテープの存在を記者から問われたホワイトハウスのスパイサー報道官は、テープの存在や大統領のツイートについてほとんど言及しないまま、次の質問に移っている。
--------------------------------- ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト