2025年には300万人を超える…仕事をしながら介護をするビジネスケアラーの経済損失は約9兆円!?
「ビジネスケアラー」とは、仕事をしながら介護を行う人々のこと。「ワーキングケアラー」とも呼ばれます。日本は超高齢社会に突入しており、ビジネスケアラーは増加の一途をたどっています。2025年には、ビジネスケアラーは300万人を超すことが推計されています。仕事と介護の二重の負担を抱えるビジネスケアラーは、相談できずに孤立したり、両立の難しさから介護離職を選択したりする人も少なくありません。労働力不足が深刻化する今、仕事と介護を無理なく両立させるための環境整備が求められています。
すぐそこに迫る「2025年問題」 企業にできるビジネスケアラー支援策とは
昨今、共働きや核家族が増え、働き続けるために保育園やベビーシッターなど外部のリソースを活用することが一般的になりました。それに伴い、国や企業からの「育児をしながら働く人への支援」は手厚くなっています。介護領域でも同様の支援が必要です。かつては専業主婦が育児と介護を担ってきましたが、専業主婦ありきの介護様式は成り立たなくなっているからです。 日本では長らく少子高齢化が叫ばれていますが、事態はどれほど深刻なのでしょうか。 総人口における65歳以上の割合のことを「高齢化率」と呼びます。 WHO (世界保健機関)の定義では、高齢化率が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、さらに21%を超えると「超高齢社会」と呼びます。日本は2007年に超高齢社会に突入。2023年時点の高齢化率は29.1%で、約3.4人に1人は高齢者です。この先も高齢化は進み、2065年には約2.6人に1人が高齢者になることが予測されています。 高齢者を支える側はどんな状況なのでしょうか。介護しながら働くビジネスケアラーは、2025年に300万人を超すことが試算されています。その多くは、40~50代の企業の中核を担う管理職世代です。親の介護が必要な状況下では、当事者は身体的・精神的負担から生産性が下がります。経済産業省の推計では、それによる経済的損失額は2030年時点で約9兆円にのぼるとされています。 大きな影響をもたらすにもかかわらず、ビジネスケアラーへの支援は不十分です。育児と仕事の両立に比べて、介護と仕事の両立はまだ社会的な認知度が低く、問題が表面化しづらいのです。また、介護は周囲に言いにくいテーマであり、昇進や評価への影響を恐れ相談しにくい側面も。当事者が声を上げづらいことで企業もニーズをくみ取れず、状況がなかなか改善されない負のループができてしまっています。 しかし、介護の両立支援を行う企業は徐々に増えてきました。具体的には、介護休暇日数の上限の引き上げや、介護目的の時短制度の導入、「言いづらさ」を軽減するために介護への理解を深める研修などです。当事者グループの構築や、介護の専門家につながれる仕組みを取り入れた企業もあります。 「2025年問題」という言葉もあるように、2025年には約800万人いる団塊世代が75歳以上の後期高齢者になります。企業は、決して少なくない数の従業員が「ビジネスケアラー予備軍」であることを自覚し、柔軟な働き方や風土改革など、介護と仕事の両立がかなう環境整備をする必要があるのです。