廣岡達朗コラム「京都国際高のダブルエースは大化けの予感。東尾修の投球術に学べ」
ピッチングの極意
そういう投球術は東尾修(元西武)に学べばいい。 私は東尾とはいろいろあったが、彼の野球センスは認めている。西武の監督時代、日本シリーズでは先発ではなく、抑えやロングリリーフで起用。彼は自分の弱点を逆手に取った。というのも東尾という男は球が速くなかった。その代わりコントロールが良い。打者が踏み込んでくると察したら、わざと体の近くへ放る。それでのけぞらせておいて、今度は外角へ何の変哲もない球を投げてストライクを取る。それがピッチングの極意というものだ。 今はプロにしてもそうだが、大抵カウント3-2になる。2ストライクナッシングになれば捕手はベースから離れて構え、1球大きく外す。まったく意味がない。遊び球を交えた挙げ句にフルカウント。打者の弱点を徹底的に突けばいいのだ。 プロ野球はアマチュアの模範なのだから、良い野球をすべきである。 そういう意味では巨人の浅野翔吾は構えが良くなった。バランスが取れている。体も少し絞れた。だから自分の打撃ができている。二軍に落ちて変わった。2年前に高校生だった男が覚醒すれば、よき見本になる。 ●廣岡達朗(ひろおか・たつろう) 1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退団。92年野球殿堂入り。 『週刊ベースボール』2024年9月9日号(8月28日発売)より 写真=BBM
週刊ベースボール