元副大臣まで逮捕された羽田空港「いわくつき格納庫」でムダな税金 新たな“寝耳に水の計画”も
二つの事件
羽田空港には、いわくつきの格納庫がある。もとは「日本航空」の子会社が所有していたが、経営破綻に伴い、2012年4月、石川・金沢市に拠点を置く「ウィングス・オブ・ライフ」(WOL)なる会社へと売却された。その経営者は、栃木県内の刑務所に服役中の伊集院実こと金沢星(キムテクソン)という北朝鮮出身の人物だった。 ***
金受刑者は朝鮮総連系信用組合から融資を受け、格安の1億8000万円で格納庫を手に入れた。しかし格納庫が建つ国有地の使用料年1億円が払えず、使用許可取り消しの恐れが生じると、賄賂作戦を展開。国交省航空局の首都圏空港課業務係長に現金350万円と米ラスベガスへの旅費91万円を提供し、15年9月、警視庁に摘発された。金受刑者は建設会社への詐欺も加わって懲役7年、係長は懲役2年6カ月執行猶予3年の刑が科され、幕が引かれた。 次に登場するのが、元文科副大臣の山内俊夫被告である。金受刑者は、格納庫の転売で建設会社の詐欺被害を弁償して刑の軽減を図ろうとしたものの、うまくいかなかった。そして収監間際の18年3月、山内被告が代表理事を務める「資源外交戦略研究所」と売買契約を締結したのだ。その買収資金28億円を用立てた「マルナカHD」と、山内被告が設立した受け皿会社「羽田空港格納庫」(現・フェニックス)へと格納庫の所有権が移転した。 山内被告とマルナカは、「朝鮮総連本部ビル」競売問題にも登場したコンビ。総連本部ビルを22億円で落札すると、瞬く間に44億円での転売に漕ぎつけた。夢よもう一度、と格納庫でも組んだわけだが、21年11月、山内被告は1億円を着服した業務上横領の疑いで警視庁に逮捕された。そして今年3月半ば、東京高裁での控訴審判決では懲役4年の一審判決が支持され、山内被告の控訴は棄却されている。
裁判の渦中
目下、いわくつきの格納庫そのものも裁判の渦中にある。国が21年4月、WOLに対し、土地使用料の未納分7億7000万円の損害賠償を求め、提訴。さらにその年の11月、建物撤去と土地の明け渡しの訴訟を追加し、同時に、フェニックスには所有権移転登記抹消の訴訟を起こした。 一方で、未だ格納庫の転売を画策中なのが、資源外交戦略研究所で山内被告に次ぐ専務理事の立場だった尾崎光郎氏だ。尾崎氏は22年前に東京地検特捜部が摘発した「業際研事件」の首謀者として知られる。事件では、故・鹿野道彦元農水相の秘書を経て、コンサル会社「業際都市開発研究所」を起ち上げた尾崎氏が公共事業の口利きビジネスを展開し、自治体の首長3人を含む総勢15人の手が後ろにまわった。 その尾崎氏曰く、 「格納庫にかかわってきたこれまでの経緯を明かすと、フェニックスが格納庫を取得した当時、汚職事件を起こしたWOLは国交省から格納庫の使用許可を取り消されていました。そのWOLの新たなオーナーに就いたのは、静岡市の韓国系金融業者でした。金受刑者から借金のカタにWOLを取り上げたのです。新生WOLは国交省を相手取り、使用許可再交付を求める訴訟を起こしました」 「週刊新潮」2024年4月4日号「MONEY」欄の有料版では、格納庫をめぐる訴訟と転売話について詳報する。 「週刊新潮」2024年4月4日号 掲載
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