「ばばも死ぬから、死んで」78歳の女性は苦悩の末、孫の首に手を掛けた 発達障害、不登校、暴言と暴力、すべての責任を背負い込み…
夜はゲームばかりでなかなか寝ようとせず、結果として朝は起きられない。遅刻や欠席が増えた。真面目で責任感が強い祖母は、孫の将来を強く不安視するようになった。 一方で、主治医は一貫して、学校に行くことを押し付けないよう指導した。祖父も賛同し、暴言や暴力を受けることがあっても「病気のせいだ」と捉え、さほど問題視はしなかった。 しかし、性格が生真面目な祖母は違った。凶悪事件のニュースを見るたびに悪い想像が膨らむ。「いつか孫も事件を起こしてしまうのでは」 祖母はこの頃、長男にこうこぼしていたという。 「孫のことを考えると、ご飯ものどを通らないし夜も眠れない。あんたはいいわね」 子育ては大人3人で分担していたはずだったが、いつしか祖母ひとりが抱え込み、思い悩む状況に陥っていた。 3月上旬ごろからは、孫が不登校状態に。自宅で祖母と2人きりで過ごす時間が増えた。暴言や暴行は毎日のようにあった。このため、祖母はスクールカウンセラーにいろいろ相談していたが、3月下旬、相談内容が学校側に一切共有されていなかったことが判明する。「これまで相談していたのは、一体何だったんだろう」。そう言って、ひどく落ち込んでいた。
▽事件前日「限界です」 事態は悪化していく。3月26日夜、孫がかんしゃくを起こし、祖父の左ほおを突然、平手打ち。祖母はショックを受けた。自分も幼い頃、戦死した父に代わり祖父母に育てられた経験がある。孫が祖父に手を出すのは考えられないことだった。孫はさらに「出て行け!」と暴言も吐いた。 見かねた祖父は、祖母をレストランに連れ出した。 「私、もう限界です」 2人で静かに食事をした帰り際、祖母がぽつりとつぶやいた。これまでも「疲れた」「楽になりたい」という発言を祖父は聞いていたものの、「限界」という言葉を耳にしたのはこの時が初めて。「相当追い詰められているんだな」と思ったが、まさか翌日に事件を起こすとは思っていなかった。 翌27日朝、長男と祖父は既に外出していた。祖母は自宅で段ボールをまとめる作業をしていた時、物置の棚にロープを見つけた。 それを手に取って孫の寝ている和室に向かい、犯行に及んだ。110番を受けて警察官が駆け付けた時、祖母はそのロープをクローゼットのポールに掛け、首をつろうとしていた。殺人未遂容疑で逮捕された。 ▽再出発
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