「韓国では知らない人がいない」バラードの皇帝・ソン・シギョンが「日本語ペラペラ」な理由
今やひとつの音楽ジャンルとして不動の人気を得ている「K-POP」。しかし、市場の移り変わりは激しく、大量の新しいグループやアーティストが登場し、スターダムに上り詰める人もいるが、そのまま消えていく人たちも少なくない。 【画像】デビューから24年、韓国で人気が途絶えないバラード歌手、ソン・シギョン そんな浮き沈みが激しい激戦の韓国音楽市場で、長く愛されている歌手がいる。「バラードの皇帝」「鼓膜彼氏」の異名を持ち、BTSのジョングクやSHINeeのオンユをはじめ、男女問わず多くの後輩アーティストたちが彼の曲をたびたびカバーしている。人気韓国ドラマのOTSにも参加し、歌声を聞けば「あ、この人の声、知っている」と多くの人が気づく。そして先日、YouTubeの公式チャンネルの登録者数が202 万人を突破した。その人は、韓国を代表する歌手のひとりであるソン・シギョンさんだ。 今年4月には、5年ぶりに福岡、大阪、東京など6都市で日本ツアー『SUNG SI KYUNG LIVE TOUR 2024』を開催し、12月11、12日には、東京・立川ステージガーデンで「2024ソン・シギョン年末コンサート〈SUNG SI KYUNG〉 in Japan」を開催する。シギョンさんの年末といえば、韓国で毎年恒例になっているチケット即完のコンサートを控え、激務の真っ最中であるはずなのに、日本でのコンサートを選択したという。その覚悟と日本で活動するソン・シギョンさんの想いについて、昨年に引き続き、2000年初頭から韓国カルチャーにハマっている編集者でライターの安藤由美さんが取材した。
デビューから24 年、韓国で知らない人がいない存在
私事で恐縮だが、筆者はシギョンさんがデビュー間もない2003年、2005年と韓国・延世大学の野外劇場で行われた音楽祭でシギョンさんの生歌を聴く機会があった。2003年に参加したときには、実を言うと他のアーティスト目的に参加したコンサートであったが、瞬く間にシギョンさんの声に魅了されてしまった。デビュー曲からヒット曲を連発していたので、歌自体は知っていたが、歌い出した途端、想像を超えたやわらかで温かい歌声にドギマギしてしまったほどだった。会場には多くの女性たちやカップルで埋め尽くされていたがシギョンさんの曲が終わるとため息と声援が入り乱れ、涙している女性もたくさんいた。 その後、当時梨花女子大学に留学していた友人に「ソン・シギョンの歌声にハマった」と話したら、「今、大学でも彼にハマっている人ばっかりよ。知的な感じも含めてとても人気がある」と話していた。 そこから約20年、今もソン・シギョンさんは韓国の音楽界、芸能界では欠かせない存在になっている。若いK-POPグループも彼の名曲をカバーする人は多く、大げさではなく「ソン・シギョンを知らない韓国人はいない」と断言してもいいだろう。しかし、日本では、韓国の音楽=K-POP、グループ系が主流で、彼の存在を知らない人もいる。 「そうですね。確かに、韓国では自分が思う以上に、多くの方に知られた存在になりました。前回の取材でもお話しましたが、街を歩けば、若い人もおばあちゃんやおじいちゃんにも“ソン・シギョンだ”と認知していただけるようになりました。でも、残念ながら日本や世界では、今、韓国=K-POPであり、アイドルグループという形が出来上がってしまいました。もちろん、彼らの活躍も韓国人としては誇らしく素晴らしいと思います。 そういった韓国のカルチャーが世界に拡散する中で、「では、自分はどうなのだろうか」と考えた。その結果、ソロ歌手が世界に挑戦してもいいじゃないか、ソロ歌手でもここまでできる、と示したいという気持ちになりました。まだ、どうなるかは未知数ですが、日本の活動は“新人”のような気持ちでやっています。かなり歳を取った新人になってしまいましたが(笑)」