社説:政府の経済対策 規模でなく妥当性の議論を
緊急性や政策効果が不確かなまま、「規模ありき」の大盤振る舞いを繰り返すのか。 政府が経済対策をまとめた。裏付けとなる2024年度一般会計補正予算案は14兆円に迫り、23年度の13兆円を上回る。 物価高に対応し、経済の底上げを図るというが、内容より最初から「昨年度を超える」前提で進んだように見える。財源は国債頼みとなる公算で、財政健全化の目標も遠ざかりかねない。 経済対策の柱では、住民税が非課税の低所得世帯に3万円を給付し、うち子育て世帯には子ども1人当たり2万円を上乗せするという。 生活費増にあえぐ困窮世帯への支援は必要だ。ただ非課税世帯の大半は高齢者で、一定の資産を持つ人も含む。一方、対象外でも低賃金で厳しい暮らしを送る非正規労働者らは多く、幅広い目配りが要る。 電気・都市ガス代への補助を来年1~3月に再開し、年内で終了予定だったガソリン補助金も延長することにも違和感を禁じ得ない。 これまで延長を繰り返し計11兆円の巨費を充てながら、効果検証は不十分だ。いずれも高所得者や大企業にも恩恵が及び、国際的な脱炭素の流れにも逆行する。 補正予算の趣旨に合わない支出を含む点も見過ごせない。 人工知能(AI)や半導体産業に複数年度で10兆円以上の公的支援をする枠組みを創設し、石破茂首相肝いりの地方創生事業では新たな交付金をつくる。中長期的な成長戦略としながら、補正規模の「かさ増し」に潜り込ませた印象が拭えない。 補正予算は本来、当初予算成立後に起きた景気の急速な悪化や災害への対応が目的で、財政法は「特に緊要となった経費」などに限り支出を認めている。 かつて1兆~3兆円で推移していた補正予算は、新型コロナウイルス禍で急増した。政府は経済財政運営の「骨太方針」で、膨らんだ歳出構造を「平時に戻す」と昨年から明記し、財政健全化の指標である基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標も掲げる。それなのに惰性で大型補正を組むのでは政策の整合性が問われる。 さらに、多額の補正予算が未執行のまま繰り越されていると会計検査院が度々指摘していることも、事業の吟味が不十分な実態を浮き彫りにしている。 経済対策には「手取りを増やす」という国民民主党の訴えに沿い、所得税控除を現行103万円から引き上げることやガソリン減税の検討も明記した。 国と地方の税収の大幅減など課題も多く、社会保障改革とも絡むため、丁寧な検討が要る。 補正予算案は28日に始まる臨時国会に提出される。与野党は政治的な思惑を超えた責任ある審議を尽くし、問題点を正さなければならない。