関西で話題の「なにわ筋線」ってどんな路線なの?
当初からルートを変更、JR西日本と南海が共同運行
この文書によると、なにわ筋線として整備されるのは、JRが大阪駅の北側、うめきた地区に建設している北梅田駅を起点とし、JRなんば駅へと至るルートと、その途中から南海新今宮駅へ向かうルートの2つ。中間駅として、中之島駅・西本町駅・南海新難波駅(いずれも仮称)の3駅が整備されます。 この計画を聞いて「おやっ?」と思う方がいるかもしれません。もともとなにわ筋線は、南海側の接続駅は汐見橋駅となる計画でした。1時間に2本、2両編成のワンマン列車がのんびりと走る汐見橋線は、“都会のエアポケット”といった雰囲気を醸し出しています。なにわ筋線の計画で、この汐見橋駅がどうなるのか、一部のファンからは注目を集めていましたが、計画変更によって汐見橋駅が変貌を遂げることはなくなりました。 代わって、南海との接続駅は新今宮駅となりました。計画ではこの辺りから地下線を建設し、現在の南海難波駅とは別に新駅を建設する予定です。おそらく新線は阪神高速環状線の脇、パークス通りの下を通ることになると思われ、新駅がどのあたりになるか、興味のわくところです。 そして、路線の建設は新たに設立される第三セクター会社が行ない、JR西日本と南海が施設を借り受けて営業を行なうというスキームも発表されました。このスキームは、現在両社が共同運行している関西空港~りんくうタウン間と同じで、同区間の施設は関西空港の運営会社が保有しています。 ところで、運賃はどうなるのでしょうか。現在、関西空港からJR難波までは1060円、対して関西空港から南海の難波までは920円と開きがあります。なにわ筋線の開業後、北梅田駅から関西空港駅まで行く時に、JRに乗るか南海に乗るかで「同じ場所から同じ駅へ向かうのに運賃が違う」といった事態になる可能性が高く、どういった対応が取られるのか気になるところです。
阪急の参画がどう影響するのか?
そして、今もっとも世間の注目を集めているのが、なにわ筋線計画への阪急の参画です。 実は、なにわ筋線計画の初期段階では、阪急の参画も検討されていました。しかし、先にお話しした2004年の答申では、阪急と大阪市営地下鉄四つ橋線が連携する形で、西梅田~十三間の新線が盛り込まれ、阪急となにわ筋線の関係は消えたと思われていました。今回の発表によって、阪急が大阪ミナミエリアや関西空港へのアクセスに、いまだに意欲を持っていることが明らかになったといえます。 ただし、現時点では阪急がどのように関与するのかは明らかになっていません。なにわ筋線の線路幅はJRや南海の規格に沿った1067ミリメートルで、現在の阪急路線が採用している1435ミリメートルとは異なるため、このままでは乗り入れができません。今年5月の発表で明らかになった、北梅田駅から阪急十三方面へ向かう「なにわ筋連絡線」が、どちらの線路幅で建設され、どう運営されるのか、さらには阪急が計画をあたためている、十三~新大阪間の新線建設をどうリンクさせるのか、これから本格的な検討が行なわれるところです。 さらに、一部報道では南海の列車が北梅田から先、JRの東海道線支線(通称:梅田貨物線)に乗り入れ、新大阪駅まで直通することで両者が合意したという話も飛び出しました。JRの特急「はるか」と南海の特急「ラピート」が今後どうなるのかも、気になります。 いずれにせよ、大阪市内だけでなく関西の交通をガラッと変える可能性を秘めた、なにわ筋線。現在のところ、2031年春の開業が目標に掲げられていますが、一刻も早く整備され、関西の鉄道がより便利になるのを期待したいところです。 (文/伊原薫/鉄道ライター) ■伊原薫(いはら・かおる)大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線、北千住駅の発車メロディ。