SFの街が現実に?進化する「都市デジタルツイン」の最前線、6社が挑む革新とは
デジタル空間に広がる、いつも暮らしている街とそっくりの景色。そこを自由気ままに散策したり、ビジネス拠点として活用したりできたら……そんなSF映画のような話を「現実」にするのが、今、政府が急ピッチで構築・整備を進めている「都市デジタルツイン」です。政府が推進しているプロジェクトでは実際の街に関する膨大なデータを収集し、民間事業者でのビジネス活用も拡大中。最近は不動産ビジネスなどに取り組む6社がモデル事業として選定されました。本稿では、都市デジタルツインの最近の動向と今後の展望について、解説します。 【詳細な図や写真】産官学の幅広いプレーヤーを巻き込もうとしている(出典:『PLATEAU コンソーシアム第2回定例会議/第2回アドバイザリーボード/第13回3D都市モデルの整備・活用促進に関する検討分科会』国交省))
「都市デジタルツイン」とは
そもそも「デジタルツイン」とは、デジタル上の仮想空間に、現実空間の存在をふたご(ツイン)のようにそっくり再現したものを意味します。 「都市デジタルツイン」とはその名のとおり、街をまるごとデジタル空間に再現することです。名前の頭に「都市」がついていますが、東京・大阪などの都市圏だけでなく、人口の比較的少ない地方も対象になることがあります。 今、都市デジタルツインが注目されている背景には、2つの分野への関心の高まりがあります。次世代モビリティと、災害対策です。 まず、次世代モビリティについてです。配送ロボット、自動運転車の普及・推進が見込まれる中、ロボットやクルマ、ドローンなどに、街の構造をいかに正確に把握させるかが大きな課題となっています。 都市デジタルツインを一元化された巨大な「街のデータ集」として活用すれば、AIの活用拡大とあいまって、こうした次世代モビリティ効率的かつ安全に動かせるだろう、というわけです。道路や電車内の混雑状況も把握しやすくなり、エネルギー需給、インフラ整備などの分野で、ヒトにもロボットにも役立つ技術革新が期待されています。 一方、災害対策の分野でも、都市デジタルツインのポテンシャルが注目されています。 都市デジタルツインは建物に加え、地形の情報もことこまかに記録するため、災害が街に及ぼす被害想定も視覚的に表示しやすくなります。たとえば、河川を仮想空間に再現し、その水位を変化させると、どの程度の水量で洪水が起こるか、どの範囲に被害が及ぶのかがイメージしやすくなります。 また、大雨や津波といった自然災害時に比較的安全な場所が分かれば、住民が取るべき避難ルートや、むだのない堤防の立地や高さを考える際にも役立ちます。 そのほかにも、道路や電車内の混雑状況の把握、オーバーツーリズム対策、環境保護、エネルギー需給予測、インフラ整備など幅広い分野で技術開発につながる可能性があります。