SFの街が現実に?進化する「都市デジタルツイン」の最前線、6社が挑む革新とは
2027年に1,140億円の経済効果をもたらす「プラトー」とは
都市デジタルツインを構築するのは相当に手間も資金もかかりますが、こうしたメリットへの期待もあって世界各国で今、デジタル空間に実際の街を再現する試行錯誤が進められています。 日本でも、国土交通省が中心となって「PLATEAU(プラトー)」というプロジェクトが進められています。プロジェクトは2020年に始動し、日本全国の都市デジタルツイン化を目指しています。 プラトーの特徴は、3Dの都市モデルを整備した上で、オープンデータ化していることです。一般に開かれたデータにすることで、防災や環境、まちづくり、コンテンツ、モビリティーといった用途で、民間企業が活用できるのが大きな利点となっています。 すでに全国各地でデータ整備が進められ、2022年の約100都市から、2024~2027年には約500都市に拡大すべく自治体などへの整備支援が行われています。同時に、整備済みのデータを活用するため、開発環境を用意したり、ハッカソンなどのイベントを開催したりといった取り組みが進められています。 国が掲げる「PLATEAUビジョン2023」によれば、プラトーの経済効果は2022年の10億円、2023年の30億円から、年々ほぼ倍々で右肩上がりとなり、2027年には1,140億円になると試算されています。
6企業が挑む3D都市モデルの革新
プラトーを民間サービス創出に活用しようと、2024年9月には不動産分野の6企業がモデル事業として選定されました。今後、各事業者が提案したソリューションの実装に向けて、半年間かけて検討・開発を進める予定になっています。 たとえばリアルグローブは「3D都市モデル統合型不動産調査支援システムの活用可能性検証」を提案し、支援対象に選ばれました。 同社の提案は、不動産事業者やゼネコン、ハウスメーカーを想定ユーザーとして、「ここにアクセスすれば不動産調査に必要な情報をまとめて収集できる」システムを構築する、というものです。 不動産物件の評価には、価格情報に加えて、周辺施設や防災、都市計画、将来推計人口といった情報が必要です。また、Webで取得できない情報は、役所の各部署の窓口に出向かなければなりません。これらに時間や労力、コストがかかることから、あらゆるデータを一元管理できるシステムを作れないかという発想が、今回の事業の柱となっています。 国土交通省の不動産情報ライブラリから引っ張ってきたデータと、プラトーによる3D都市モデルデータ、登記所に備え付けられた地図のデータと、航空写真や地形図などのデータを重ね合わせることで、ワンストップで評価に必要な情報が表示されるシステムをイメージしています。 このほかにも、マップルの「MAPPLE法務局地図ビューアと3D都市モデルの連携による不動産各種業務の効率化」、くわやの「3D都市モデルを利用した建築計画ボリューム検証出力サービス」、パスコの「『不動産鑑定・固定資産税・相続税』評価における3D都市モデルの活用」、構造計画研究所の「不動産敷地内のグリーンインフラ推進による、温熱環境と人流への影響の可視化」、森ビルの「画像の定量分析による眺望シミュレーションサービスの開発」などの提案が選定されました。