《エルサルバドル》国民50人に一人が塀の中=犯罪者2千人一斉に移送作戦
中米エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は12日早朝、「テロリスト監禁センター(Cecot)」に2千人の受刑者を一斉移送するという、史上初の大規模作戦を実施した。4万人収容可能な同刑務所は米州大陸最大の刑務所で、ブケレ氏の犯罪政策の究極の象徴だ。2022年以降、6万4千人以上を逮捕しているが、その多くは裁判命令も証拠もないため同国人権団体から批判を受けている。12日付G1サイトが報じた。 同国政府が公開した映像には作戦の詳細が記録されており、白い短パンと坊主頭の受刑者たちが、2月に開所したばかりの新刑務所内を走り回る姿が映し出されている。受刑者は、イサルコ、シウダバリオス、サンビセンテの三つの小さな刑務所から連行され、その多くにはギャング名の入れ墨をしているのが見える。 同刑務所は、現在過負荷になっている刑務所システムを緩和するために建設された。その中でも、ラ・エスペランサ刑務所は定員1万人に対し、収容者数は3万3千人に達していた。 受刑者一斉移送の様子を地元メディアがSNSで動画付きで報じている
刑務所システムの責任者であるオシリス・ルナ氏は、新刑務所は166ヘクタールの土地に建設され、250人の警察官が巡回すると説明した。ブケレ大統領は声明で、「今朝、2千人以上の犯罪者を移送した。彼らはそこで、わが国民に対して犯した罪を償うことになる」と述べた。 22年以来、同国はブケレ氏の要請により憲法上の「例外状態」(estado de excepción)にあり、市民の憲法上の権利を停止し、裁判官の発行する令状なしに警察が逮捕できる権限が強化され、短期間に殺人発生率を46分の1にまで下げた。 その反動で、政府の犯罪抑制施策によって受刑者数が急増し、総人口650万人の約2%が収監されており、世界で最も高い収監率とされている。 パレスチナ系の元広報記者であるブケレ氏は「世界一クールな独裁者」と自称し、エルサルバドルをほぼ絶対的な権力の下で統治しており、これにより彼は独裁主義者としての批判を浴びている。 米国のシンクタンクであるインター・アメリカン・ダイアローグのアナリスト、タマラ・タラシュク氏はAFP通信の取材に対し、「ブケレ氏は民主主義に不可欠な抑制と均衡を無視した独裁的な政策を実施しており、それを撤回するとは考えにくい」と語った。 ブケレ氏はSNSの常連で、自分を「独裁者」と呼ぶ人々を嘲笑し、また憲法で再選が禁じられているにもかかわらず、再選を求めることを許可した判事を含め、国家のあらゆる権力を自分に有利なものにしている。