「なおそうとするな、わかろうとせよ」上司にも部下にも必要な聴くスキル
「互聴(ごちょう)」とは、文字通り「互いに聴き合う」こと。どちらか一方が話し役・聞き役になるのではなく、上司が部下の話を傾聴すると同時に、部下も上司の話を傾聴する、互いに絶えず理解し合いながらコミュニケーションを行うことをいいます。あらゆる組織で人事評価面談やキャリア面談などが行われ、近年は1on1の導入が進むなど対話の機会が増えるにつれ、効果的に聴くことが求められています。
「聴く」はスキル。 悩みを打ち明けたくなる上司像とは
テレワークが働き方の一つのスタイルとして定着しましたが、チーム内のコミュニケーションは従来のままでよいのでしょうか。ZoomやSlackなど、新しいツールを導入する企業も増えていますが、コミュニケーションの取り方は以前のままというケースもあるでしょう。 直接、顔を合わせる機会が減ったことで、職場の人間関係が希薄になったり、組織文化が醸成しにくくなったりするなど、濃いつながりが失われつつある現在。自由かつ自然発生的に集まった「インフォーマル・グループ」が存在している組織ほど生産性が高いという研究結果もあるように、職場の一体感を高めて組織を活性化させるには、メンバー同士が心を通わせることが必要です。 コミュニケーションには、主に三つの要素があります。情報共有、意思の共有(意思疎通)、そして気持ち・感情の共有(共感)です。互聴の重要性について唱える、臨床心理士でキャリアカウンセラーの宮城まり子氏は、上司が部下の心をつかむには、三つ目の「共感」が特に大切だとしています。「なおそうとするな、わかろうとせよ」という言葉を掲げ、事実の共有だけでなく、どんな気持ちか、これからどうしたいかを共有し合うことで、深い対話ができる素地ができると言います。 「聴く」力を身に付けるには、どうしたらいいのでしょうか。宮城氏は具体的な傾聴のコツについて、次のような聞き方を勧めます。面談の前に十分な準備を行うこと、何のための面談なのか目的を明確化すること、部下に温かい視線を向け、相槌を打ちながら聴くこと、要点をまとめて返すこと、効果的な質問をすること、部下自身に考えさせること、終了後に記録を残すことなど。 深い信頼関係が、組織を強くします。しかし、聴く力を育むことは簡単なことではなく、個人の心掛け一つでは不十分なことも。例えば、聴くスキルをマネジャーの評価項目の一つにするなどして、会社を挙げて互聴に取り組んでいくことが大切です。