森崎ウィン、北海道で自然と戯れる──「エンターテイナーとしてもっと高みを目指したい」
自然と向き合うことでエンターテインメントを深める
「もっとキャンプをしたい!」 「十勝千年の森」をあとにして、今回の旅で予定していた撮影を終えた森崎。セルフドリップで淹れたコーヒーをひと口飲んで、そう発した。 「この間、撮影スタッフたちとキャンプに行ったんです。仕事がきっかけで出会った人たちだけれど、仕事の話なんてまったくしない。キャンプ好きが集まって、持ち込んだ食料を分け合って、食べて飲んで。年齢も肩書きも関係ない感じが心地よくて。『十勝千年の森』を訪ねたとき、入り口に『大自然と一体になる理想郷作り』と、書いてありましたが、それもキャンプで自然の中で過ごす時間の醍醐味だとも思いました。今回は仕事として旅をしたわけですけれど、正直に話せばプライベートで北海道を訪れて、コテージに長期間滞在したかった(笑)。フィッシング、森、キャンプ、その真ん中にある自然に触れるにはもっともっと時間が必要だなと思いました」 趣味であるキャンプと自然の中で過ごすことは、仕事に何か影響を与えるのだろうか?「キャンプをやったから歌が上手くなる、芝居が上手くなるわけじゃない。けれど何かが生まれてくると思うんです。社会に出ている誰もがそう思うのでしょうけれど、僕は、森崎ウィンという鎧をまとう瞬間はやっぱりある。そのときは、エンターテイナーとして最高のパフォーマンスを目指す。20代のとき、自分が信じていたことと周囲からの反応とのギャップに対して反骨精神みたいなものがあった。いろいろな経験を積んで30代をすぎて、少しずつ信頼を得て、自分の意見に耳を傾けてもらえるようになってきたと思います」 エンターテイナーとしての進化が著しい森崎に、これからのことを尋ねてみた。「目標ですか?“20年後に自分の顔つき、もっと面白くなっていたい”かな。エンターテイナーとしてもっと高みを目指したい。芝居、歌、映画監督、それぞれ表現方法は違うけれど、僕のなかではひとつの線で繋がっている。試行錯誤を重ねて10年後、20年後にちょっとずつ完成形の森崎ウィンにしたい。完成ってないかもしれないけれど、死ぬまでそう言い続けるのもいいかなって。30代で生意気言うなって感じですよね」 では、森崎が考える完成された姿とは。「俳優目線でいえば、すーっとカメラの前に立っただけで、『スゴい!』みたいな。顔やスタイルがいいとか、そういうことではなくて。演技が上手いのは当たり前で、滲み出る何かがある。“作りもの”では出せない何か……それは人間臭く生きることなのかなって。人間であることを忘れたらエンターテイナーでいることは多分しんどいのかもしれない。だから人間を感じるために僕はキャンプをするし、人間が敵わないもの、すなわち自然と向き合っていたいんです」 社会で生きることは、重さは違っても誰もが鎧をまとうことなのかもしれない。そして旅すること、自然と対峙することは、その鎧を少しだけ軽くしてくれるものなのだろう。人々を楽しませるエンターテイナーもまた、ときに観るものの鎧を軽くする役割も担う。森崎の目指すエンターテイナーには、そんな趣がある。