新型コロナのパンデミックは子どもの発達にポジティブな影響もあった!? トロント大学の報告
カナダのトロント大学らの研究グループは、「新型コロナウイルスのパンデミック前とパンデミック中に生後24カ月と54カ月を迎えた時点の小児の発達状況を調べた結果、新型コロナウイルスによる社会的交流の遮断が、小児の発達にネガティブな影響だけでなくポジティブな影響も与えた」と報告しました。この内容について、武井医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
研究グループが発表した内容とは?
編集部: 今回、カナダのトロント大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。 武井先生: カナダのトロント大学らの研究グループは、新型コロナウイルスによる社会的交流の遮断が小児の神経認知機能の発達にどのような影響があったのかを調べました。研究成果は、学術誌「JAMA Network Open」に掲載されています。 研究グループは、2022年6月までに生後24カ月と54カ月の発達状況評価を受けていた小児を対象に評価をおこないました。24カ月時点の神経発達状況の評価には、0~60のスコアがつけられる「ASQ-3(乳幼児発達検査スクリーニング質問紙)」と、0~2は低リスク、3~20は高リスクとする「M-CHAT-R(乳幼児期自閉症チェックリスト)」を適用し、54カ月時点の神経認知機能と社会情緒的能力の評価には「National Institutes of Health Toolbox」を用いています。 評価の結果、生後24カ月時点で評価を受けた小児は、ASQ-3の構成要素のうちの問題解決困難のリスクは低く、個人的-社会的困難のリスクは高くなりました。M-CHAT-Rのスコアには有意差はみられませんでした。一方、生後54カ月時点で評価を受けた小児はパンデミック中の方が理解できる語彙が多く、視覚的順序記憶力は高く、認知能力全体も高くなりました。なお、社会情緒的発達には差はみられなかったとのことです。 研究グループは、今回の結果について「新型コロナウイルスのパンデミックと小児の認知的および情緒的な発達の間に、正の関係と負の関係の両方がみられた」と結論づけています。その上で「小児に対する支援策を構築する場合には、発達が遅れている領域を見定め、そこに焦点を当てる必要がある」としています。