新型コロナのパンデミックは子どもの発達にポジティブな影響もあった!? トロント大学の報告
今回の発表内容への受け止めは?
編集部: カナダのトロント大学らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。 武井先生: 新型コロナウイルスによってもたらされた社会的交流の低下による情緒への影響は限定的であったこと、これに加えて問題解決能力に関しては維持できたというポジティブな側面があったことは意外でした。ネガティブな面が注目されがちだったため、今回のカナダのトロント大学らの研究は、大変興味深い結果となりました。
新型コロナウイルスと小児の発達に関する日本の研究は?
編集部: カナダのトロント大学らの研究グループは、カナダの小児を対象にした今回の研究で、新型コロナウイルスによる社会的交流の遮断はプラスとマイナスの両面で影響が出ていたことを明らかにしましたが、日本ではどのような研究結果が発表されているのでしょうか? 武井先生: 新型コロナウイルスの流行による生活の変化が小児の発達に与えた影響に関する研究は、2023年7月に京都大学らの研究グループが発表しています。 研究グループは、2017年~2019年に1歳と3歳だった首都圏の認可保育所に通う子ども約890人を対象に追跡調査をおこないました。その結果、コロナ禍を経験した5歳の子どもはコロナ禍前に5歳になった子どもと比べて、発達が全体で平均4.39か月遅いことが明らかになりました。特に「大人への社会性」という領域や言葉での表現などの領域で遅れが目立っていました。研究グループは「5歳頃の発達に重要な人との交流が、コロナ禍で制約を受けたことで発達の遅れにつながった」と指摘しています。 一方、3歳の子どもについては、コロナ禍を経験していた方が「善悪などの概念を理解する領域」で、3.79カ月発達が早くなっており、全体でもほぼ違いは出ませんでした。研究グループは「在宅勤務で親との接触が増えたことなどが要因」と推察しています。全体の結果として、カナダでの評価と同様に、日本でもプラスとマイナス両面の影響がみられた形となっています。