斎藤知事の「“選挙後の疑惑”をテレビは当初大きく取り上げなかった」兵庫県知事選に「テレビ不信」をもたらした“報道の穴”
NHKが考える「SNS時代の選挙報道」
NHKの「日曜討論」(11月24日放送)を見て仰天した。ふだんは閣僚をはじめ与野党の幹部らが生出演して、政治情勢をめぐる議論をする番組だ。この番組が「選挙とSNS」をテーマにして放送された。公共放送としてもそれだけ重大な問題だと考えたのだろう。 兵庫県知事選や都知事選での石丸現象、衆議院選での国民民主党旋風、米国の大統領選など、SNSが選挙戦に影響を与えたと思われるケースが相次いでいるとして、専門家を含めてSNS時代の選挙のあり方について議論した。兵庫県知事選でのNHKの出口調査では有権者が投票で参考にしたのはSNSや動画投稿サイトがテレビや新聞を上回っていたからだ。 ネット上の分析を専門にする国際大学の山口真一准教授は「2024年は大きな転換点だ」と断言する。 AIエンジニアで起業家の安野貴博氏も、都知事選に立候補してSNSの影響力で15万票を獲得した経験から山口氏に同調した。 「選挙のやり方としてよく語られていたのが『地上戦』と『空中戦』と呼ばれるような、街頭演説や既存メディア対応をメインでやって(地上戦)、あまった時間でネットの対応をやりましょう(空中戦)と語られていたが、このバランスを変えて、むしろネットに多くの時間や知恵を絞らなくてはならないように思う」という。 安野氏はNHKのアンケート調査で「SNS・動画共有サービス」などとネット系を一括りにするところがまだ粗い見方だと批判した。ネットにも候補者に長時間話を聞くものもあり、これは貴重な一次情報で、フェイクニュースを流すネットメディアと同列に扱うべきではないとする。 山口氏は有権者側の各候補の政策を深掘りして深く知りたいというニーズに応えていたのかという視点と、真偽不明の情報に対して迅速に調査してオンラインで速やかに分かりやすく発信していたのかという視点で、マスメディアにはそれらが欠けていたと課題を示した。 昨年はジャニーズ性加害問題で子どもへの性虐待が“人権”という観点から決して許されないとして、忖度などで“沈黙”した過去を猛反省したテレビ。2024年、これまでの選挙期間中の選挙報道のあり方についてテレビは再び問われている。
水島 宏明