斎藤知事の「“選挙後の疑惑”をテレビは当初大きく取り上げなかった」兵庫県知事選に「テレビ不信」をもたらした“報道の穴”
11月17日に投開票が行われた兵庫県知事選はテレビや新聞にとって想定外の結末で、失職した斎藤元彦前知事がまさかの再選を果たした。テレビ各社は「背景にSNS」という解説を繰り返している。制約がほとんどないSNS。制約が多いテレビや新聞。決定的な要因としてSNSの影響力があったという見立てはどの大手メディアでも一致している。 【疑惑の写真】「え!? 近すぎひん?」斎藤元彦氏とPR会社社長・折田楓氏の密着ショット さらに兵庫県内のPR会社の社長が11月20日、斎藤陣営で「広報全般を任せていただいていた立場」とnoteに投稿し、公職選挙法違反の疑いへと世間の関心は大きく動いた。 テレビ報道を研究する上智大学の水島宏明教授が、一連の報道を振り返る。(全2回の2回目/ 前編 から続く) ◆ ◆ ◆
選挙後の“疑惑”をテレビ各社は当初大きく取り上げなかった
テレビや新聞が報じない大きな「穴」。それを有権者がSNSで埋めようとした結果として斎藤元彦前知事の圧勝につながった。 だが、選挙の後になって斎藤陣営をめぐる疑惑が浮上している。 PR会社の女性社長が斎藤陣営の戦略的広報を「監修者」として中心的に行っていたのは自分だとnoteで公開したことが発端だった。 運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定、校正・推敲フローの確立、ファクトチェック体制の強化、プライバシーへの配慮などと非常に詳しく記してある。 斎藤氏本人も代理人弁護士もPR会社に委ねたのは「ポスター制作だけ」だとして違法性を否定しているが、PR会社の社長のコラムの表現とは大きく矛盾する。共同通信が11月22日に配信したのにテレビ各社は当初大きく取り上げなかった。
テレビで最初に詳しく報じたのは…
テレビで最初に詳しく報じたのは11月24日放送のフジテレビの「日曜報道THE PRIME」。フジは25日の「めざまし8」でPR会社社長が「選挙カーの上から臨場感を届けるためのライブ配信」をする様子の画像などを取り上げて、若狭勝元東京地検特捜部副部長や弁護士でもある橋下徹・元大阪市長が解説したが、2人とも斎藤氏の弁明は説得力に乏しいとした。 テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」もPR会社社長がインスタグラムにアップした、斎藤氏がこの会社の事務所を訪れた時の写真を放送。社長が斎藤氏の選挙カーの上にあがる動画なども報道した。夕方ニュースも民放各社はトップで報道し、NHKも「ニュース7」で「知事が違法性を否定」と伝えた。 取材に対して、当のPR会社社長は応じず、選挙期間中に社長が街頭演説などの現場で活動していたのは「あくまで(公職選挙法に違反しない)ボランティア」と斎藤氏の代理人弁護士らは口を揃えている。だが、報道で元検事らの話を聞く限り、いずれ「公職選挙法違反」の容疑で捜査が進む可能性は否定できない状況だ。