自身の得点能力の高さを証明した仙台89ERSの阿部諒「役割は変わりましたけど、マインドは大きく変わっていません」
藤田HC「仙台にとって阿部の加入は大きな分岐点になった」
仙台は昨シーズン1試合の攻撃回数を示すペースがリーグで24チーム中13番目とリーグ中位だったが、今シーズンは4番目と多く、シーズンを通じてトランジションの意識を高く持って戦ってきた。実際、第1戦ではファストブレイクが3得点と伸び悩み敗戦に繋がったが、この試合では27得点を記録し勝因の一つとなった。 藤田ヘッドコーチはトランジションがポイントだったと話す。「昨日は『自分たちのバスケットじゃないよね』と話しました。オフェンスではまず走ろうというのが、今シーズン強調してきたことなので、ボールをアドバンスして皆でコーナーまで走って、ビッグマンもリムランしてというのをすごく大事にしてきました。全員がアグレッシブに攻めてくれたと思います」 この試合でチーム最多タイの19得点を挙げた阿部も同じようにトランジションについて言及した。「このチームが1試合目からシーズンを通じてやってきたことを、もう一度立ち直れてやれたことが勝因だと思います。オフェンスの終わりからディフェンスのスタートが遅かった部分を修正して臨みました」 昨シーズンまで所属した島根スサノオマジックでは『守備職人』というイメージが強かった阿部だが、仙台ではプレーメーカーとして平均14.6得点、4.8アシストを記録してオフェンスの中心を担った。4月の古巣島根戦ではキャリアハイとなる35得点を叩き出すなど、得点能力の高さを存分に証明したシーズンとなった。 だが、この大きな変化について阿部自身は次のように話す。「昨シーズンの僕の役割はディフェンスとオープンシュートを決めることでした。今シーズンはハンドラーという役割に変わりましたけど、マインドは大きく変わっていません。相手の脅威になるために、いつでもゴールに向かってプレーすることは決めていることです」 藤田ヘッドコーチは阿部の加入が仙台にとって大きなインパクトだったと話す。「全員がチーム思いな選手たちが揃っている中で、良いエゴというか『自分がやる』という選手が出てこなかったのが昨シーズン苦しかったところです。阿部がそれをやってくれて、引っ張られているヤス(青木)も昨日も今日も良いプレーをしてくれましたし、仙台にとって阿部の加入は大きな分岐点になりました」 開幕4連敗からスタートしたが、結果的には27勝33敗と昨シーズンよりも8つも多くの勝ち星を手にした。この要因について藤田ヘッドコーチは「(要因は)良い人間がチームにいることです。4連敗して外からヤンヤ言われ、ヘッドコーチとして僕は繊細な人間なので辛かった時期ですが、コートに入るとみんなのエナジーを感じて、愛あふれる人たちに非常に助けられました。そういうチームだからこのような結果を残せたと思います」とチームを評価した。 阿部も同様にチームについて、こう振り返る。「本当にセオさん(藤田HC)の言葉通りだと思います。良い人間がいて、僕自身も勝つために間違った伝え方をしてしまっても、皆は僕のことを仲間として受け入れてくれて、皆がいなければここまでこれていませんでした。このチームでなければ良いパフォーマンスを保てなかったと思います。チームメートやセオさん、スタッフに感謝したいです」 当然ながらバスケットボールはチームスポーツでスーパースターがいても簡単に勝てるものではない。それぞれの選手が自分の役割を全うして、さらに大きなケミストリーを生み出す。この試合でもチーム力の強さをあらためて感じさせられた。素晴らしい人間性の選手やスタッフが集まって作り上げた『仙台らしいバスケ』、その可能性は無限に広がっていく。
ズッボン
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