小さくなったワイヤレスマイク2種、RODE「Wireless Micro」と「DJI Mic Mini」を試す
■ 当たり前になったワイヤレスマイク ワイヤレスマイクと言えば、昔は業務用マイクの定番だったわけだが、ここ1~2年で急速にコンシューマ市場向けのものが多数登場し、活気づいている。昨年はRODE「Wireless ME」、DJI「DJI Mic」、Anker「AnkerWork M650 Wireless Microphone」が立て続けに発売されたところだ。 【画像】RODEの「Wireless Micro」ブラックモデル(右)。一般のイヤフォンケースに近いサイズ この背景にはVlogをはじめ、ネットのコミュニケーションが動画コンテンツ化したことが挙げられる。スマートフォンやアクションカメラなどで使えるワイヤレスマイクは、カメラが離れると音が小さいという単純な問題を解決する。 今回ご紹介する新製品2種は、いずれも人気のスタンダードモデルがあり、それの小型版という位置づけになっている。従来よりも価格が抑えられ、買いやすくなったのもポイントだ。 まず一つ目は、オーストラリアの音声機器メーカーRODEの「Wireless Micro」で、価格は26,400円。もう一つはDJIの「DJI Mic Mini」で、価格はUSB-Cアダプタ付きセットが24,200円となっている。 いずれも2マイクとレシーバーがセットになっており、専用充電ケースも付属する。人気ブランドの新製品2種を、早速テストしてみよう。 ■ 機能を絞って大幅に小型化した「Wireless Micro」 RODEのワイヤレスマイクには、定番のWireless GOがあり、現在は32bitフロート録音対応のGen3まで進化している。カラーバリエーションが14種類あるのも驚きだ。 一方、今回の「Wireless Micro」は、ある意味スマートフォン向けに特化したモデルだ。先にUSBバージョンが登場し、12月20日にはLightningタイプが登場する。カラーバリエーションはブラックとホワイトの2種。今回はUSBバージョンのブラックモデルをお借りしている。 マイク自体も小さいが、レシーバーがかなり簡略化されたことで、全体的にコンパクトな作りとなった。専用充電ケースも、ちょっと大きめの完全ワイヤレスイヤフォンケースぐらいしかなく、スマートフォンとセットで持ち歩くにはちょうどいい。 マイクは2つ付属しており、背面にはクリップとマグネットの2Wayで服に留められるようになっている。レシーバはUSB端子しかないドングル型で、ボタン類は何もない。ペアリング状態を示すLEDがあるのみだ。最初からペアリングされており、充電完了すればすぐに使える簡単さがウリだ。 ウインドスクリーンも付属しており、マイク外周部にはめ込んで使用する。残念ながらウインドスクリーンを装着したままではケースに収納できないので、屋外利用時はウインドスクリーンだけ別途持ち出す必要がある。 バッテリー駆動時間は最大7時間で、充電ケースも合わせて最大21時間使用できる。レシーバ側はUSBでスマホ直結なので、バッテリー駆動ではない。伝送距離は約100m。 設定アプリは先行モデル同様、「RODE Central Mobile」が対応する。2つのマイクを分割(ステレオ)で使用するか、モノラルで使用するかの設定のほか、出力ゲインを3段階に設定できる。スマートフォンのカメラアプリは、ほとんどがオートゲインで録音されるようになっているので、出力ゲインはミディアムで問題ないだろう。 ■ 多彩な組み合わせで選べる「DJI Mic Mini」 DJI Mic Miniは、マイクやレシーバ、それからスマートフォンと接続するためのアダプタで多彩な組み合わせがある。価格も違うので、以下表組でまとめておく。 マイク単体でも販売されているのは、同社のOsmo Action 5 Pro、Osmo Action 4、Osmo Pocket 3に対しては、Bluetoothで直接接続できるからだ。今回は、24,200円のLightningアダプタが付かないケース付きコンボと、ホワイトカラーのマイク単体商品7,700円をお借りしている。 マイクユニットは、従来製品に比べて約1/2程度に小さくなっており、これならラベリアマイクとほぼ遜色ない。横に電源ボタンとリンクボタンがある。付属レシーバとはすでにペアリング済みだが、上記のDJI製カメラと直接接続するためにリンクボタンが必要なのだろう。なおローカル録音機能はないので、録音ボタンはない。 充電は底部の接点を使うのみなので、マイク単体商品にはスタンド型の充電クレードルが付属している。 レシーバも新設計で、ディスプレイを省略した小型サイズとなっている。上面にはペアリング状態を示す2つのLEDのほか、レシーバの接続状態を示すLEDがある。またサイドにはゲイン調整用ダイヤルがあり、±12dbの調整が可能だ。 こちらも両わきに電源ボタンとリンクボタンがある。またリンクボタン側にはアナログ出力もある。底部にUSB-C端子があり、ここからも充電できる。底部のフタを開けると電子接点があり、ここにスマートフォンアダプタを接続する。 つまり用途としては、USB-CやLightningでスマホ直結もできるし、一般のカメラ向けにはアナログ接続もできるという、従来のDJIマイクと遜色ない。Bluetooth接続もできるようだが、現時点でのファームウェアでは接続が安定していない。 充電ケースは、RODEに比べればかなり大型に見える。実際レシーバが多機能なので、若干大きくなるのは致し方ないところだ。ただそこはよくしたもので、内容積に余裕があるので、マイクにウインドスクリーンを装着したままでもフタが閉められる。必要なもの全部がケース1個にまとまるというのは、可搬性が高い。加えてキャリングポーチも付属するので、ケーブル類も一緒にまとめられる。 駆動時間は、マイク単体で約11.5時間、レシーバは10.5時間。充電ケースを併用すると約48時間となっている。また最大伝送距離は400mとなっている。 設定ツールは、DJIのカメラ製品コントローラである「DJI MIMO」が担当する。今回はAndroid版でテストしているが、Android版のDJI MIMOはGoogleからリジェクトされており、DJIサイトからAPKファイルをダウンロードする方式に変わっている。 操作感も独特で、レシーバをスマホに直結すると、DJI MIMOの設定画面へ直接遷移する画面が表示される。Bluetooth接続が安定すれば、DJI MIMOのカメラアイコンからデバイスを探して接続するというルートも使えるようだ。 現時点では、Lightning端子のiPhoneしか持っていないユーザーは、Lightningのスマートフォンアダプタがないと、DJI MIMOと接続できない可能性が高い。別売で単品でも買えるようなので、Bluetooth接続が上手く行かなかったら購入するしかないだろう。 設定項目としては、2段階のノイズキャンセリング、2つ使った際のステレオかモノかの選択、ローカットなどがある。 ■ ほとんど同じ性能 では早速集音してみよう。基本的には人の声を集音するのがメインの用途となるので、比較的ロードノイズが多い交差点脇で集音状況をテストしてみた。スマートフォンのマイクではなかなか厳しい条件だ。DJIのノイズキャンセリングは「ベーシック」である。 同時に集音してあるので、交互に切り替えてお聴きいただける。音質的には、どちらもそれほど大きな違いはないように思える。当日はまあまあ風のある日だったが、どちらもウインドスクリーンがあるので、風切り音もなく良好に集音できている。 一方でバックグラウンドノイズのレベルを比較すると、RODEのほうはかなりノイズがカットされているのがわかる。特に設定などはないので、これがデフォルトというわけだ。 対するDJIのほうは、ノイズキャンセリングレベルが2段階あるので、「強」に切り替えて追加で集音した。こちらもかなりバックグラウンドノイズが低減されているのがわかる。RODEの標準状態と同じぐらいだろうと思われる。 続いて、自然音が集音できるのかテストしてみた。どちらもマイク2つを使い、ステレオで集音している。DJIのノイズキャンセリングは「ベーシック」である。 どちらのマイクも、音声に対してはノイズキャンセリングが利くが、音声がない場合は自然音の集音ができるようだ。波の音はピンクノイズに近いので、周波数特性がなんとなくわかる。RODEのほうは若干低音寄り、DJIのほうは若干高音寄りに聞こえる。 RODEは人の声に限らず、オールマイティに対応できるのに対し、DJIは音声集音にある程度特化した特性、という判断もできるが、その差は小さい。用途ごとに使い分けるほどの、特性の差はないように見える。ただゲイン調整は、DJIがレシーバ単体でできるのに対し、RODEはアプリで切り換えないといけないので、臨機応変にゲイン調整がしたい場合は、DJIのほうが有利ではある。 続いて、伝送距離をテストしてみた。両製品とも2マイクを使用し、モノラルで集音している。 RODEのほうは、スペック上は伝送距離が100mとなっているが、今回のテストでは200m地点まで問題なく伝送できた。スペック的にはかなりコンサバに表示してある、というか、完全に保証できる範囲で記載してあるという事だろう。 DJIのほうは、スペック上は400mとなっているあたりはさすがである。ただ200m地点では、若干音声に不安定なザラツキがみられる。立地的にこれ以上離れる事が不可能なので、テストはここまでしかできなかったが、400m飛ぶことは飛ぶ一方で、完全無劣化で伝送できるかどうかは多少不安という結果になった。 またどちらのマイクも、体でマイクが遮られた状態でも50m超の地点から問題なく伝送できることがわかった。動きがあるシーンや、後ろからカメラが付いていくシーンでも問題なく対応できるだろう。 ■ 総論 双方とも、ローカル録音機能をあきらめてより小さく、価格を安くということをウリにした製品だが、方向性は若干違う。 RODE「Wireless Micro」は、スマホ勢へ向けて特化した製品にまとめてきた。特にLightningバージョンは、もう旧iPhone・iPad以外には繋がる先がないという製品である。USB-C版は新しめのiPhoneとAndroid両方で使えるので、若干潰しが利くという印象だ。 DJI「DJI Mic Mini」は、小型ながらアナログ出力もあり、スマホにも一般のデジタルカメラにも対応できるのが魅力だ。ローカル録音できるのは上位モデル限定になるので、安全性重視の場合は上位モデル、電波状況が悪くない場合はMiniで十分対応できる。製品もいろんなバリエーションがあるので、マイク2個もいらないとか、いろんな規模に合わせてリーズナブルに導入できるのも魅力だ。 スマートフォン向けとしての市場が一番大きいところだろうが、アクションカメラ類でも、USB-Cに接続すれば外部マイクとして認識するものもある。例えばDJI Action 2は、外部マイク入力がないので苦労している人も多いが、USBオーディオインターフェスには対応するようで、今回のRODEもDJIもレシーバをUSB端子に挿したところ、どちらも外部マイクとして認識された。お手持ちのアクションカメラがある方は、一度繋いで確認してみるといいだろう。 2製品の登場で、いよいよワイヤレスマイク一般化の時代の幕開けと言えそうだ。その一方でここまでの性能を出されると、他社はなかなか厳しくなったのではないだろうか。
AV Watch,小寺 信良