トイレを愛する彼女の「東大推薦合格」までの軌跡 2次試験の直前に合否、一般入試対策も必須
合格できたのは「熱意」と「姿勢」のおかげ?!
1次の書類審査が通った後も、とくに面接の対策はせず、一般の試験対策として迫り来る共通テストの対策を淡々と進めました。彼女の場合、テレビや講演会など「自分の言葉で想いを伝える」場に恵まれていたので、あまり緊張せず当日を迎えられたそうです。 東大推薦は受験してから結果が出るまで約3カ月、2次試験の10日前ほどに合否が出る仕組みだったので大人しく一般の2次試験対策を進めました。 なぜ彼女が東大に合格することができたのか? その理由は、「熱意」と「姿勢」が非常に大きかったといいます。 「高校3年生の私にとって、経済学という学問自体の知識は非常に少なく、最前線を走る教授陣の専門的な質問に答えられないことはわかっていました。でも、自身が研究していた『トイレ』についての知識やその研究をするに至った背景や想い、熱意について誰にも負けない圧倒的な自信がありました」 また、「トイレ」「経済」という一見つながらなそうな点同士がどうしてつながるのか、そのプロセスを論理的に説明できることを第一に意識したそうです。トイレ問題の根幹にはトイレに関するデータ収集がされていない現状や日常的なものに対する経済的効果の期待の薄さが挙げられます。トイレと経済学を結びつけている先例がないからこそ、予期せず面接の場で「自分がこの研究の第一人者になる」と意思表明までしていたそうです。 彼女は将来、オールジェンダートイレを含め、多様なトイレのあり方やその重要性の認識を深めてもらうために『トイレ×経済学』という新たな学問テーマとして多機能トイレ設置がもたらす経済インパクトや理想的なトイレの追求に励んでいきたいと話します。 例えば、現在はトイレマップアプリの開発を行っており「車椅子」「乳幼児ベッド」など、さまざまな機能のついたトイレを現在地から探すことができ、既存のトイレを可視化して効果的に活用するほか、どの地域に設備が不足しているのかも洗い出すことで、さらなるトイレ環境整備に努めていきたいそうです。 また、高校時代から行っているトイレの監修事業では「トイレをよりよいものにすることによってどれくらいの収益が上がるのか」といった経営者らの声を受け、経済インパクトの測定をすることで裏付けられたデータを元にさらなる推進に取り組みたいと話します。 「トイレは日常的で当たり前で、だからこそいまだ学問として研究があまりなされていない分野だと感じます。人生100年時代と言われる中、そのうちトイレで過ごす時間は5年。トイレを快適な空間にすることは人生を豊かにするために不可欠です」と彼女は語りました。 (注記のない写真: すべて原田さん提供)
執筆:西岡壱誠・東洋経済education × ICT編集部