「煽り」とか「大袈裟」とか言われたりもするけれどーー「コロナの女王」岡田晴恵の本音
「煽り」と言われることもありますけど
気になるのは、やはりオミクロンだ。年始から再びコロナが大流行するだろうと、取材時(2021年12月)に岡田は予見していた。 「個々の症例は、マイルドになっているように見えます。とはいえ、油断はできない。無症状や軽症で動き回る人が増えるということですから。とにかくウイルスの感染伝播速度が速い。最近の人出はすごいでしょう。私は『もやしもん』の目を持っているわけではないですけど、この雑踏にどれくらいの感染者がいるのかなって不安になる。比べるものでもないですが、死者数だけで言うと新型コロナウイルスでは、東日本大震災よりも多くの人が亡くなっている。決して軽視しちゃいけない」 感染を広げないためにも、スピーディに検査をし、感染者を特定する。一定期間隔離をすることで流行を食い止める。こうしてウイルスをコントロールしながら、経済を回す。岡田ははじめから一貫して主張してきた。 「最初に強く早く封じ込めることによって、経済も救いたいという思いがありました。 感染症対策と経済対策って、相反するって思われがちなんですけど、実はベクトルは一緒。患者が増えれば医療が逼迫する、そこまでの思考は皆さんにもあるかもしれません。当初は、コロナには治療薬がなかった。今、抗ウイルス薬や抗体カクテル療法も出てきた。でも、検査して確定診断がつかないと使えないから、検査体制は大事だった。オミクロンは感染力が強いから同時期に感染者、患者が出る。そのとき、例えば日本のトラック運転手の1割、2割が寝込んだら、物流が滞り、コンビニから物が減ります。ライフラインを担う人、警察官や消防隊員、こういうところで広がれば、それはもう生活と安全保障の維持に関わります。感染症の大流行というのは、医療だけに止まらない。社会基盤の維持、危機管理についての考え方を、国立感染研でパンデミック対策をやっていた自分としては言いたかったし、こうした目線でものを言う人間は数が少なかったんです」 「よくスペインインフルエンザを引き合いに出す方がいますけど、100年前は自給自足の暮らしが残っていましたから、村や共同体、個々人が家族単位で持ちこたえることができたんです。でも今はワンルームで一人暮らしという方も多い。自給自足が崩れ、社会が細分化され、個人がコンビニに頼る生活の多い中では、ドミノ倒しみたいに社会生活にまで影響が出るんです」 島国に暮らす日本人は、これまで運よく感染症の被害を免れてきた。 「日本人は地震には敏感だけど感染症には不感症だ」 ヨーロッパの研究者仲間からそう皮肉を言われた、と岡田は肩をすくめる。 「人って経験したことのないことは、わからないんですよ。だからこそ、このコロナ、未知なる感染症対策にとって大切なことは、想像力なんです。サイエンスに裏打ちされたイマジネーション、それは専門で学んだ人間にしかできないこと。『煽り』と言われることもあります。大袈裟だとか。だけど、そうならないという確約はない。海外に目を向ければわかりますよね。最悪の事態を想定しながら、危機管理をする、これが感染症対策のはずです」