「なんでこんなに遅いの」 スターリンク導入で「機内Wi-Fi」が劇的に進化する根本理由
航空機事故時の連絡強化
スターリンクを導入することで、これまで連絡が困難だった場面でも活用できると期待されている。例えば、航空機事故が発生した際、過去にはパイロットとの連絡が取れなくなることがあった。 もし事故の衝撃で機内ハンドセット(通信機器)が故障しても、安定した通信手段があれば、コックピットと客室乗務員(CA)との迅速な意思疎通が可能になるだろう。 また、医療サポートが必要な緊急時にも役立つだろう。機内で病人が発生した場合、専門の医療従事者が搭乗している可能性は低いため、衛星通信を使って地上の専門家と連絡を取り、アドバイスを受けることができる。緊急時には一刻を争う判断が求められるため、これが大きな助けとなる。 スターリンクの強みは、高速で低遅延な通信を提供するだけでなく、完全に無料で利用できる点だ。この流れを受けて、多くの航空会社がWi-Fi無料化を進めている。 例えば、JALは2024年10月1日から、国際線エコノミークラスでも一部のWi-Fiサービスを無料で提供することを発表した。ANAでも、国際線ファーストクラスやビジネスクラスに加え、エコノミークラスでもテキスト通信が無料で提供されるようになっている。 Wi-Fiの無料化が進むことで、利用者にとってより身近で快適な空の旅が実現するだろう。
低軌道衛星が変える日常通信
これから数年で、機内の通信環境は大きな変化を迎えることになる。 現在、日本の航空会社では、JALの子会社であるZIPAIRが機内インターネットの高速化に向けて、スターリンクの導入を検討している。この取り組みは、日本国内の航空機内通信に革命をもたらす可能性が高い。 また、スターリンクは機内だけでなく、地上でも注目されている。 例えば、2024年1月1日に発生した能登半島地震では、通信手段を確保するために重要な役割を果たしたことが記憶に新しい。 低軌道衛星通信は、地上の状況や気象に関係なく、安定したWi-Fiサービスを提供できるため、飛行機内だけでなく、私たちの日常生活にも大きな利点をもたらし、緊急時の重要な支援手段となる可能性がある。
森内智子(航空ライター)