暑さで国産果実打撃 サクランボや梅、収穫量が大幅減
リンゴ産地も警戒
高温による果樹への影響が顕在化している。サクランボでは品質低下や奇形果の発生でかつてない低収量を見通す声がある他、梅でも暖冬による受粉の不調が響き、「凶作年だ」との声が主産地から上がる。前年産で生産量が過去最低だったリンゴでも、続く高温予想に産地の警戒感は強い。今後、収穫を迎える果実では日焼け予防の徹底などが求められる。 「おそらく過去最低の収量になる」。サクランボの最大産地・山形県のJAてんどうの担当者は危機感を隠せない。収穫最盛期の6月に入り30度を超える高温が続いたことで「品質が急変した。8割ほど廃棄した人もいる」という。 JA果樹部会さくらんぼ部の日野耕平部長も、高温で水分が抜けてしわしわになるなど「出荷できない実が増えた」。高温による花芽の異常が原因とみられる双子果の発生も目立ち、その半分ほどは形が悪く出荷できない。今年は露地80アールに加え15アールのハウスを新設し計3000キロの収量を見込んでいたが、2500キロほどにとどまりそうだという。 県は6月上旬に今年の収穫量は平年の9割との見込みを発表したが、その後の高温を受け「さらに下回る可能性がある」とする。 梅も厳しい。和歌山県のJA紀南によると、5月中旬の試算で、今年の出荷量は平年並みだった前年比46%。担当者は「凶作と言っていいほどの年だ」と話す。暖冬で開花が前進し未熟花が多く受粉が不調だった。和歌山に継ぐ産地の群馬県も、開花前進でミツバチの活動時期とずれたこともあり受粉が進まなかったと指摘。県内のJAはぐくみは、収量は前年を3割ほど下回る見込みという。 リンゴも昨年は猛暑などによる減産で、収穫量が前年比18%減の60万3800トンで過去最低となった。長期貯蔵で国内流通を支える主産地・青森県産の在庫量も乏しく、輸入リンゴの販売攻勢が目立つ。同県によると、昨年は落果がこれまで少なかった品種でも発生したという。担当者は「今年も暑さで生育が前進している。被害が広がらないよう関係者一体で指導していく」とする。 農研機構は、暖冬による受粉への影響に備え、「(花粉採取専用の)授粉樹の確保や人工授粉の徹底が必要」と指摘。今後収穫を迎える桃やブドウなどでは、かん水による果実の日焼け予防や、薬剤散布などによる着色促進を訴える。(南徳絵)
日本農業新聞