【懲役18年】「連絡返して、おかしくなっちゃうよ」…裁判で語られた男の“執着"と娘を救えなかった両親の無念 鶴見女子大生殺人事件裁判
■娘を守るため... 被告の“執着”と向き合った両親
検察側によると、父親の忠告にも懲りることなく、伊藤被告からの執ようなメッセージは続いた。 「会えなくていい。電話しよう。」 「今日会えないならさすがに許さないよ」 「今日必ず家に行くから」 次第にエスカレートするメッセージに、紗菜さんは恐怖を感じていた。ただ、その執ような行動から父親が目を背けることはなかった。 「自分勝手に行動して、何も意味ないです。関わらないで」。 父親は伊藤被告にこうメッセージを送ると、再度病院に行くよう念押しした。しかし、この夜、伊藤被告の姿は再び紗菜さんのアルバイト先にあった。店内に入ると勤務中の紗菜さんに笑いながら手を振ったという伊藤被告。紗菜さんはおびえていたという。 紗菜さんから連絡を受けた両親はとっさに駆けつけた。紗菜さんに謝りたいと直接手紙を渡してきた伊藤被告。これで諦めてくれれば…そう願った両親は手紙を受け取った。 「会いに来ないで。こういう手紙を書かないで。連絡しないで」。 手紙を読み終わった伊藤被告に紗菜さんはきっぱり伝えた。
■「さなちゃんごめんね」…エスカレートした被告の行動
「別れるくらいだったら包丁買って刺す、つか殺す」 「未遂で捕まったら紗菜がハッピーなだけでしょ」 伊藤被告が車内でこうつぶやく様子が、車のドライブレコーダーの記録に残っていたことを検察側は明かしている。伊藤被告は自宅近くのディスカウント店に向かうと包丁を万引きし、その包丁を持って紗菜さんの自宅へと車を走らせたという。 当時の心境について、伊藤被告は弁護側の被告人質問でこう述べている。 「諦めたんですが、もう一度話したい。普通にしたら無理、包丁で脅せば戻れる(復縁できる)と思いました」 伊藤被告は、家にあった紗菜さんの鍵を使い室内に入ると、寝ていた紗菜さんを起こした。紗菜さんは驚いた様子で部屋の外に移動し話をしたという。 父親によると、家に戻った紗菜さんは母親に報告。父親は連絡を受け急いで帰宅すると、伊藤被告の姿はすでになかった。「送って行く」―大学に行く時間が近づいていた紗菜さんに父親はそう声をかけたが、自宅のそばには伊藤被告がとどまっていた。 「帰ろうと思ったが、これ逃したらいつ会える?と考えてしまった」 「もうちょっと押せばよりを戻せるかな?と考える中で今までの思い出がよみがえった」 伊藤被告は、その「思い出」が殺意に変わったと述べている。「ここで(関係が)終わったら自分には何もない」などという気持ちと、耳にした紗菜さんの異性に関するうわさが、殺意に拍車をかけた。 「さなちゃんごめんね」 家から出てきた紗菜さんに背後からこう声をかけると、伊藤被告は包丁を手に犯行に及んだ。