【懲役18年】「連絡返して、おかしくなっちゃうよ」…裁判で語られた男の“執着"と娘を救えなかった両親の無念 鶴見女子大生殺人事件裁判
■事件1週間前に「もう完全に別れたい」…紗菜さんからのSOS
2人の関係に大きな亀裂が入ったのは、事件の1週間前。きっかけは、伊藤被告が紗菜さんに車で送ってもらおうと頼んだのを断られたことだったという。腹を立てた伊藤被告は紗菜さんに暴力をふるった。助手席に座っていた紗菜さんの右肩を殴ると、ハンドルを動かそうとした紗菜さんの腕を強くつかんだ。車を降りようとした紗菜さんの背中を殴ると、抵抗してきた紗菜さんの腹を蹴ったという。紗菜さんはその場にうずくまったが、伊藤被告は気づかうことなく紗菜さんのスマートフォンを地面に投げつけた(被告人質問より)。 紗菜さんは車にバッグを置いたままその場から逃げ、警察に通報。連絡を受けた父親は急いで警察に駆けつけた。そのとき紗菜さんの腕にはあざができていたという。 「(紗菜は)もう完全に別れたいと言っていた」「別れるためにどうしたらいいかわからなかったようで私と妻に(伊藤被告から)来たメッセージを見せてどう返したらいいのか親に助けをもとめていたと思います」 父親は、伊藤被告を刺激しないように時間をかけて距離を取るようアドバイスした。
■「連絡返して、おかしくなっちゃうよ」
交際解消に向けて動き出した紗菜さんと両親だったが、簡単にはいかなかった。伊藤被告が拒み続けたからだった。検察側によると両親はまず、紗菜さんが伊藤被告の車に置いてきたバッグを返すよう頼んだという。バッグの中には自宅の鍵も入っていたからだ。紗菜さんの母親から連絡を受けた伊藤被告はこう返した。 「紗菜と会えるまでは厳しいです」「このまま終わるのはイヤです」 母親は「紗菜は少し時間が欲しいと言っている」「2人には今、時間と距離が必要」、そう言って諦めずに伊藤被告を説得した。 検察側によると、バッグはのちに返してもらったが中に入っていたはずの鍵はなくなっていたという。そして、紗菜さんのもとには伊藤被告から大量のメッセージが届くようになった。 「紗菜お願い、電話したい。うざくなったら途中で切っていいから」 「1分でいい、1分で強制終了でいいから。お願い神様」 「会いに行かないから連絡は取りたい。位置情報も共有して」 「男と会ってるんじゃないかって不安」 「連絡返して、おかしくなっちゃうよ」 紗菜さんは「そっとしておいて」などと返すと、伊藤被告からのメッセージを両親と共有。両親はしつこくても気にしないようアドバイスしていた。しかし、伊藤被告の“執着”はメッセージだけでは終わらなかった。 「紗菜、ずっと待ってるよ。店の横で3時間くらい」 父親の証言によると、“暴力事件”の直後には、伊藤被告が紗菜さんのアルバイト先に突然姿を現した。伊藤被告が来たことを紗菜さんから知らされた父親は急いで駆けつけた。店に入ろうとした伊藤被告の腕をつかんで制止。女性に暴力をふるうのはおかしいと伝え、病院に行って診察を受けるよう伝え、帰るよう諭した。