知事が異例の特別レッスン 東京・兵庫の高校生が福島で考える日本の50年後
知事「みなさん、いい意味でショックを受けたよう」
3日目の昼、内堀雅雄・福島県知事が多忙な業務の合間に参加しました。県トップの参加は異例ですが、さらに異例の事態がおこりました。 「今日は事務方から、『みなさんが福島に来てどう思ったか』を順番に聞く段取りになっていましたが、全部なくして、全く違うことをします」 会場がどよめきます。2つの単語をホワイトボードに書きました。
(1)Singularity (シンギュラリティ) (2)Noblesse oblige (ノブレス・オブリージュ) 「シンギュラリティは、人間が作った科学技術が我々自身でコントロールできない意味があり、具体的には原発事故です。またノブレス・オブリージュは、社会的地位を持った人が全体を考えるべきとの思想です。どちらかのお題で、自分はこう思うという意見を述べてください」 最近ではAI(人工知能)が人間の知能を超えることが懸念されているシンギュラリティ。生徒が発言します。 「恐竜が滅んだように、淘汰の歴史がある。人間が弱者になることも選択の1つではないか」「人が走る速さを乗り物が超えた時点で、1つのシンギュラリティ。人間は乗り越えてきたので、今後も生かせる方法を考えるのでは」 ノブレス・オブリージュについては、以下の意見が出ました。 「現地で話を聞いたのは『みんなのためにやっていて、自分も楽しい』と思う方々だった。そういう人が増えていけばいい」。「自分の地元の話ですが、ごみ問題が発生して以降、分別が進んで地域が変わった。危機を乗り越えた人は、大きな責任が身につくと思う」 内堀知事は「みなさんがいい意味でショックを受けたようで嬉しい」と答え、予定の2倍、30分間の特別講義になりました。
地元生徒と「自分ごと」から「自分たちごと」へ
ツアーのハイライトとなる3日目午後は、2校に県立福島高校の生徒を加えたワークショップでした。灘高前教諭で一般社団法人「ふくしま学びのネットワーク」(福島市)の前川直哉理事が、その狙いについて説明します。 「これまでの学びや気付きで、自身に変化が出たと思います。この国をつくるのは、みなさん一人ひとり。自分は何をするか、他人ごとの『自分ごと』化が大事です。同時にそれだけでは社会は変わりません。全国の同世代の高校生に何を伝えたいかを考え、『自分たちごと』化してください」