「まさか我々が半導体に関われるとは」 創業100年の”しっくい”メーカーに白羽の矢 無縁だった業界に商機 TSMC熊本進出で企業に広がる
RKB毎日放送
台湾の半導体製造大手・TSMCの熊本進出により、半導体産業とは無縁と思われる業界に、商機が訪れている。 【写真を見る】真っ白なしっくい工場 創業100年の”しっくい”メーカーに商機 九州の旧産炭地でしっくいを製造する創業100年のメーカーは、新たな参入で年間100億円の売り上げを目指す。 半導体バブルの現場を取材した。 ■まるで「アナと雪の女王」の世界 真っ白なしっくい工場 今年で創業100年を迎える福岡県田川市のしっくいメーカー・田川産業。工場内に足を踏み入れると、雪で覆われたような銀世界が広がる。まるでディズニー映画「アナと雪の女王」の世界だ。 一面を覆っているのは白い石灰。田川産業は、伝統的な建材の「しっくい」で国内トップシェアを誇り、生産するしっくいは商業施設や住宅のほか、城など文化財の修復などにも使われている。 そして去年、この工場では、半導体関連の部品の製造が、新たに加わった。 ■しっくいメーカーがつくる国内唯一の高圧プレス機 田川産業・営業部足立太郎さん「こちらで半導体製造装置に使われる部品を成形しています」 田川産業が製造しているのは、最大4000トンの圧力をかけることができるプレス機。国内には他にないという。 しっくいメーカーがなぜ半導体関連のプレス機、なのか。 話は20年ほど前に開発した独自の技術に遡る。 ■床材にしっくい 20年前の開発が商機につながった しっくいは通常のままでは耐久性の面から床には塗れない。しかし田川産業では、床材としても活用できるようにと、高い圧力をかけてしっくいを強固なタイルに加工するプレス機を独自に設計したのだ。 転機が訪れたのは去年。取引のある商社から、「耐熱性のあるファインセラミックス」を成形してほしいと頼まれた。 必要とされたのは、半導体の基盤製造に必要な、高温のプラズマに耐えられる素材だった。 高圧をかけることで、形や強度の質を均一に保ったまま薄くできるため、従来の製品よりも加工しやすく成形などの工程を大幅に短縮できるのが強みだ。 田川産業・営業部足立太郎さん「お客様から『実は、これは半導体の製造装置、周辺機器に使いますよ』という話をいただいた時は『まさか我々が半導体に関われるとはな』という思いはありました。ちょっとびっくりしました。市場は非常に大きいので、弊社が何か貢献できればと思います」