報道の自由は? トランプ政権発足1年、AP通信編集主幹が振り返る政権取材
トランプ政権発足から1年が経過したのを機に、アメリカの大手通信社AP通信社のサリー・バズビー上席副社長・編集主幹が都内の日本記者クラブで講演し、政権取材の1年を振り返った。講演内容(通訳の書き起こし)は次のとおり。
真実に近づくことがさらに難しく
皆様こんにちは。東京にうかがって光栄です。また、いいお天気にも恵まれております。今回はトランプ政権取材について、APの経験ということでお話しでき、光栄に存じております。トランプネタは未曾有の関心をアメリカ内外で呼んでおり、それを正確かつ中立かつ公平に報道するということは、もちろん大変な作業ではあります。 本日はトランプ政権の取材で1年がたった今、APとして何を学んだのか、2年目にその経験をどうすればベストにいかせるのか、今年も大事な年になるわけですが、その辺考えているところをお話ししたいと思います。 ワシントンは取材するに話題がつきないところではありますし、何かいつも起こっていますし、間違った情報とか、またいろいろと出回っている、それだけに真実に近づくには常に大変だということではありますけれども、この風潮が実はトランプ政権下で、さらに鮮明化したんです。 昔ながらのストーリーが真っ向から真実をまず否定するということに、大転換してしまったわけです。取材のアクセス権をめぐってのわれわれの戦いも、まったく形がかわってまいりました。
トランプ氏のツイッター発信、情報が超スピードで行き交う
それらを具体的にお話しする前にまず、トランプ政権のもとのホワイトハウスカルチャー、および日常どうやって仕事が進んでいくのか、少しお話ししたいと思います。これだけでももう大変なことなんですね。 政権では、かつてないほどの盛りだくさんのことが日々起こっています。ひっちゃかめっちゃか状態でありまして、政権1年目にして高官の入れ替わりがこの40年間でおそらくもっとも激しかったと思います。 2週間で側近が入れ替わったことも事実あります。一体誰が意思決定しているのか把握するのは超困難になっている。 また、誰が出世して、誰がお払い箱になるのか、また政策レベルで何が起こっているのか、本当に真実をつかむのが大変なんです。 さらに情報がもう冗談抜きで超スピードで行き交う時代にもなっているんです。その中心に座っているのが、トランプ氏が発信するツイッター発信なんですね。 これでニュースサイクルが変わりもすれば、方向がまったくガラリと変わることもあるわけです。 まさに現場に行ってそれを感じております。就任したその日から、私どものスタッフは影響を受けている。たとえば、朝の5時にツイッター発信がある時に、ちゃんと誰か記者が起きていて、それを追えるようにしなくちゃいけない。だからスタッフのスケジューリングの組み直しも、日課となってしまったといった次第です。