「決して仲間を見捨てない」防衛大で学んだ無敵のチームマネジメント
防衛大学を卒業後、システム開発企業に就職。営業職として離職率80%の企業を立て直し、リストラ目前の社員らを一流の戦力に育て上げた人物がいる。1年前に人材育成会社「ネクストミッション」を設立、現在、同社の代表を務める濱潟好古さんだ。5月にはあさ出版から『「防衛大」式最強の仕事術』を上梓した。プロジェクトを成功に導く強いリーダーシップの本質とは何なのか? 濱潟さんに話を聞いた。
■鍛えられるストレス耐性
防衛大には、リーダーシップを教えるための座学はありません。そのかわり、リーダーシップが発揮できる場所が用意されています。大学には、4つの大隊があり、その下にそれぞれ4つの中隊、そしてそれぞれに3つの小隊があって構成されています。全員が寮生活で過ごし、そのなかで上級生は下級生をまとめあげ、指導・育成を体で学びます。 入学すると「うそをつくな」「言い訳をするな」「仲間を売るな」の3つを教えられ、精神的にも肉体的にも極限の状態まで追い込まれます。将来、自衛官になったときに、ストレスがかかったときに生き残れるよう、ストレス耐性を上げていくわけです。たとえば、東日本大震災の救助において、ストレスを感じたことを理由に撤退は許されません。
■徹底した連帯責任
そのため、上級生がいろんな手段で下級生にプレッシャーをかけてきます。その一つが時間です。仕事中に突然、招集がかけられるとしましょう。小隊の一人が遅れたら、当然、本人は怒られますが、もっと怒られるのが、仲間なんですよ。理由は「仲間を見捨てた」ことです。 罰として、遅れた学生ではなく、ほかの小隊の仲間が腕立て伏せを命じられ、遅れた本人は腕立て伏せの回数を数えさせられます。連帯責任なのです。数を数えている学生は、仲間に迷惑をかけないように、何をすべきかを考え、優先順位付けや決断力、そして工夫する力を養っていきます。
■部下のミスはリーダーが背負う
防衛大にもクラブ活動に相当するものがありますが、高校のクラブ活動と決定的に違うのは、上下関係です。高校の部活動は、厳しいながらも横のつながりを大切にしますが、防衛大は超トップダウンです。リーダーである上級生の命令に対する返事の選択肢は「イエス」か「はい」かしかありません。 その代わり、命じたリーダーは責任をとらなければなりません。部下が失敗しても、それは連帯責任であり、リーダーが部下のミスを自分でも背負います。しかし、そうした責任が取れる人と取れない人がいます。究極の状況に追い込まれると、ついて行けるリーダーとそうでないリーダーが分かるようになります。 企業に就職した際、私が普通だと思っていたことなのに、部下に感謝されたことがあります。ノルマを達成できず、リーマンショックでリストラ宣告されようとしていた部下がいました。私は土日、平日の分け隔てなく、彼と一緒に営業に回りました。そのことに感謝されたのです。「仲間を見捨てない」という私にとっては当たり前のルールでした。 「仲間を見捨てない」ことは大切です。リーダーが部下の給料を下げるなどして、退職するように仕向けるのは、仲間を見捨てることです。実際、見捨てて新しい人材を採るよりも、育てた方が安くもつくのです。