「相続税の負担」を減らすには? 生前から準備できる節税対策
ほとんどの人が当事者になる可能性のある相続。家族あるいは自分が亡くなったときのために、元気なうちから準備をしておいたほうがいいようです。税理士の福田真弓さんが、もしもの時に慌てないために「今から準備しておくべきこと」を解説します。 ※本稿は、月刊誌『PHP』2024年2月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。
いざというときにあわてないために
身近な人が亡くなると、家族や親族はさまざまな手続きや届け出に追われます。その種類の多さや煩雑さにとまどう人も少なくありません。 中でも相続手続きは「そのときがきたら考えればいいや」などとのんびり構えていると、いざというときに親族間でトラブルになったり、損をしてしまうことがありますので、事前におおまかな流れを知っておくことがとても大切です。 相続の流れのなかで注意すべきポイントは「遺言書があるかないか」と「相続財産が相続税の課税対象になるか否か」の2つです。
相続の2つのポイント
①遺言書があるかないか 自分の死後に財産をどのようにしてほしいのか、遺言書はその意思を残すためのもの。遺言書に不備がなく、家庭裁判所で偽造・変造を防止するための検認の手続きが終了すると、遺言書の通りに相続がなされます。遺言書がない場合は、法定相続人が遺産分割協議を行ない、遺産の分け方を決めます。
②相続財産が相続税の課税対象になるか否か 相続税は、故人が遺した財産を引き継ぐ際に納めなければならない税金です。相続税が発生しないケースがほとんどですが(※1)、基礎控除額(※2)を超える場合は、通常は死亡日から10カ月以内に税務署に申告し、超過分の相続税を納めなければなりません。 相続財産と基礎控除額をざっくり計算して、相続税がかかりそうかどうか確認しましょう。 ※1 2021年の死亡者数に対する相続税の課税件数の割合は9.3%でした ※2 基礎控除額…3,000万円+600万円×法定相続人の数
手続きの流れ
おおまかな相続の流れを紹介します。期限が決められていることもありますので、注意が必要です。 1.遺言書を確認する 故人が独自に遺言書を作成していた場合(自筆証書遺言)、親族の誰かに預けているか、自宅に保管されていることが多いようです。病院や入所していた施設、貸金庫のほか、法務局に保管されている場合もあるので、問い合わせてみましょう。公証人立ち会いのもとで作成していれば(公正証書遺言)、公証役場に原本が保管されています。 【遺言なし】 遺言書がない場合、民法で定められた相続人が遺産を相続します。故人の配偶者は常に法定相続人となりますが、他の法定相続人には順位があります。 【遺言あり】 遺言書がある場合には、法定相続人以外の人も財産を相続することができ、相続の割合を変えることもできます。配偶者と第2順位までの法定相続人には、生活を守るために最低限相続できる権利が認められています(遺留分)。