「相続税の負担」を減らすには? 生前から準備できる節税対策
5.相続税を申告する 基礎控除額を超えた部分に相続税がかかります。税率は10~55%の累進課税です。 【相続財産を評価する】 ①故人の財産の大部分を占めるのは、自宅の土地・建物などの不動産と預金や株式などの金融資産です。金融資産は亡くなった日の残高や時価がそのまま評価額となりますが、不動産の場合は決まった計算式にもとづいて評価額を出さなければなりません。詳 細は国税庁のウェブサイトで確認できます。 ②死亡保険金や死亡退職金などの「みなし相続財産」と故人からの生前贈与財産を加算します。 ③死亡保険金や死亡退職金、相続人が同居している場合の自宅の土地などは、非課税枠や減額があるため、それらを差し引きます。さらに相続人が負担した債務、葬式費用、国や公益法人への寄付を差し引きます。 ④これらの合計から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を出します。 【相続税の申告書を書く】 相続税の申告書は相続人全員で1通を作成し、故人の死亡時の住所地の所轄税務署に提出します。計算間違いがあると税務調査を受けて、過少申告加算税、延滞税、重加算税などのペナルティが課されることもありますので、税理士に依頼することをおすすめします。
遺言書やエンディングノートのすすめ
相続トラブルを予防したり、相続手続きの負担を軽減するために、元気なうちに遺言書を書いておくとよいでしょう。自分が築いた財産の使い道や分け方を自分の意思で決めることができます。 最近では寄付という選択肢をとる方も増えているようです。遺産リストや口座番号など、資産情報を書いたエンディングノートもぜひ残しておきたいですね。 また、事実婚や同性カップルのパートナーは法定相続人として認められていないため、相続するためには生前から遺言書などの対策をとっておく必要があります。単身で子供がおらず、両親もすでに亡くなっている場合も、遺言書の作成をおすすめします。
今からできる節税対策
相続税の負担を減らすためにやっておくべきことを紹介しましょう。最近、制度改正がありましたので、興味がある方は各制度を調べてみるとよいでしょう。 ●生命保険を活用する たとえば、夫が亡くなり、妻と子供2人が預金1,500万円を相続すると相続税の対象になります。でも相続人が死亡保険金の受取人として受け取れば、法定相続人1人あたり500万円までは非課税となり、相続税はかかりません。 また、死亡者の口座はすぐに凍結されてしまいますが、生命保険は通常5営業日程度で保険金が振り込まれるメリットもあります。 ●生前贈与を活用する 相続税対策として、生前から遺産を減らしておく「生前贈与」があります。 この場合の贈与税の計算方法には「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」がありましたが、税制改正によって今年から、相続時精算課税には、従来からある累計2,500万円の枠とは別に、年間110万円の非課税枠が新たにできました。この110万円の枠は相続税への加算がありません。 一方、暦年課税制度を選択した場合は、年間110万円以内の贈与は贈与税の課税対象外ですが、死亡日からさかのぼって相続税への加算対象となる期間が、「死亡前3年」から「死亡前7年」に変更されました。 ●マンション購入による節税は困難に 今年から、所有マンションの相続税における評価方法が改正され、以前のような節税効果は望めなくなりました。 【福田真弓(ふくだ・まゆみ)】 福田真弓相続カウンセリングオフィス。税理士。1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院博士前期課程修了。2003年、税理士登録。’08年に独立、相続に特化。相続対策の提案・実行支援のほか、講演・執筆・取材などを通じた情報発信を行なう。共著『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』(自由国民社)は累計80万部超のベストセラーに。
福田真弓(福田真弓相続カウンセリングオフィス)