ホシザキ、保守販売網でライバル圧倒 全国430拠点で飲食店支える
全国に張り巡らせた保守販売網
こうして築かれてきたネットワークは、現在もホシザキを支えている。 「やっぱりホシザキさんですよ。電話したら、すぐ(保守に)来てくれるもの」。東京都内で和食店を営む主人はそう話しながら、ペンギンのロゴが光る冷蔵庫から瓶ビールを取り出した。 ホシザキは直販を強みとする。全国に15の販売子会社を持ち、その傘下に営業や保守を担う約430もの事業所を持つ。営業や保守に当たる人員は6000人ほどと、連結社員数の約45%を占める。 飲食店にとっては、冷蔵庫や製氷機が1時間でも停止してしまうだけで大損害となる。ホシザキは「即日対応」をモットーに、保守サービスを強化してきた。先ほどの和食店の主人は、他社製のものが壊れた際には「(修理に)3~4回来てもらい、計1カ月近くかかった」と話す。いかに素早く保守対応ができるかは、他社と差異化する上でのホシザキの大きな強みだ。 さらに各事業所には製品を試してもらうために料理教室のようなテストキッチンを設置。全国に約90人いる自社所属の管理栄養士などが飲食店や病院へ調理のコンサルティングを手掛ける。顧客との深い関係づくりや新製品開発のヒントを得る機会にもなるという。 ●飲食店以外にも需要あり 強い保守販売網を生かし、新たな市場の開拓も進めている。ホシザキはコロナ禍を機に、従来の主戦場である飲食店以外の市場にも本格的に切り込み、商品ラインアップを広げてきた。国内の飲食店向けビジネスは、足元ではインバウンド(訪日外国人)増加による追い風はあるが、中長期的には人口減少の影響は避けられず、新たな需要を探る必要があるためだ。 その一つが高齢者施設。少子高齢化が進む中、介護業界では人手不足が深刻だ。高齢者施設向けの給食を提供する事業者からも「人材が集まらず、撤退するしかない」と、ため息が漏れていた。 こうした声を反映して、ホシザキは盛り付けた食品をチルド保存し、提供時間に合わせて再加熱・保温できるキャビネットを開発した。開発や技術を担当する佐々木誠執行役員は「営業担当者から顧客の声を聞き、小型施設でも導入してもらいやすい価格帯や寸法にした」と話す。朝食準備のための早朝出勤の負担を軽減できるなど、介護現場の省人化需要に刺さっている。 2026年には、国内売上高の4割強をこうした飲食店以外の市場で稼ぐ目標を掲げている。60年もの間築いてきた強固な保守販売網を足場に、新たな市場へと切り込んでいく。
中西 舞子