“悪童”ネリが9回KOでパヤノ粉砕も「難しい相手だった」
プロボクシングのWBCシルバー・バンタム級タイトル戦が20日(日本時間21日)米国ラスベガスのMGMグランドで行われ、元世界バンタム級王者で同級1位のルイス・ネリ(24、メキシコ)が元WBA世界バンタム級スーパー王者で同級6位のフアン・カルロス・パヤノ(35、ドミニカ共和国)を9ラウンド、1分43秒に左ボディで悶絶させKO勝利した。WBA、IBF同級王者の井上尚弥(26、大橋)が70秒で倒したパヤノに足を使われ、その手数と至近距離でのクリンチワークに手ごずったが、9ラウンドにやっと仕留めた。ネリはデビュー以来30戦無敗(24KO)。今秋にも行われる予定のWBC同級正規王者のノルディ・ウーバーリ(フランス)と暫定王者の井上拓真(大橋)の統一戦の勝者への指名挑戦権を得ることになった。だが、拓真がベルトを統一した場合、JBC(日本ボクシングコミッション)は、国内でのネリの試合出場を無期限で停止しており、難しい問題が浮上することになる。ネリは、WBC王座を奪還した次のターゲットとして井上尚弥との“頂上決戦”を熱望している。
予告通りに左ボディ一発でKO勝利
やはりネリは強かった。 9ラウンド。スタミナ切れもあったのだろうが、力みを消してパンチを小さく当てることにシフトチェンジしたネリが、パヤノをコーナーに追いつめると強烈な左のボディアッパーが脇腹をえぐった。続けて放った左フックは的中しなかったが、ボディに大きなダメージを負ったパヤノは崩れるようにしてダウン。一度、起き上がろうとしたが、おそらく息もできなかったのだろう。そのまま大の字になって10カウントを聞いた。ネリは、勝利を確認するとコーナーに駆け上がって勝利の雄叫びを挙げた。 試合前に、昨年10月にパヤノを1ラウンドで倒した井上尚弥と比較され、「今回、1ラウンドでノックアウトできるか予測はできないが、必ずノックアウトする。ノックアウトに時間がかかっても、それでもいい」と語っていたが、その予告通りのKO決着である。 前日の計量では、約236グラム、リミットをオーバーした。1時間の猶予をもらってパスしたが、昨年3月の元王者、山中慎介との再戦では確信犯的に2キロを超える体重超過をして関係者を激怒させ、JBCとWBCから出場停止処分を受けた“悪童”ぶりが蘇っていた。 この日のネリは、体格でパヤノを大きく上回っていたが、その減量の影響があったのか、途中、何度か背中を押さえて顔をしかめるなどコンディションはベストではなかった様子だった。 1ラウンドは、パヤノが足を使い、ジャブ、ワンツーを主体に遠い距離からスピードと手数でコントロールして、ネリは1分30秒までほぼ一発もパンチを出さなかった。 ネリは2ラウンドから徐々にプレッシャーをかけてインファイトに持ち込もうとした。上下の打ち分けから右のショートフックをヒットしたが、荒っぽいパンチで空振りが目立った。パヤノはステップバックを使って、ネリの大振りを外しながら、ワンツーを軸にポイントアウトのパンチを集め、打ち終わりには思い切って体を密着させてクリンチ。中途半端な場所での戦いを避け、決してネリの得意の距離に入らないように工夫していた。インファイトになってもガードを必要以上に高く上げて、できるだけ被弾リスクを減らした。