「カヌレ」はなぜ定番スイーツ化していったのか? ローソンやスシローで大ヒット 「進化系」も登場した背景
コロナ禍の「プチぜいたく」機運が追い風に
阪神間で人気となったカヌレは西進し、2013年には福岡市に「ラ・スール」、2017年には広島市に立町カヌレなどの専門店が誕生。両店は後述する名古屋のカヌレとアイス、新潟の「カヌレドキャンティ」などとともに東京に進出し、東京でもカヌレブームをけん引していく。 ラ・スールは博多阪急に1号店を出店。これが人気となり、大阪や東京、京都に勢力を拡大していった(現在の常設店舗は福岡本店、大阪、京都の3店)。同店のカヌレは1個500円ほどと高価で、中のもっちり感を際立たせた「生カヌレ」が有名だ。担当者は「コロナ禍では特によく売れた。ステイホームで旅行に行けない代わりに、少し高いスイーツを買って、家で非日常的な時間を過ごしたかったのではないか」と話す。 2017年には、広島市で洋菓子店を営むカスターニャが市内にカヌレ専門店「立町カヌレ」をオープン。大サイズの王道カヌレを中心に、中サイズや季節限定品も販売している。広島産のレモンやブルーベリーを使った、ご当地カヌレも魅力だ。 立町カヌレの1号店は路地裏にもかかわらず、オープン2日目から表通りまで伸びる行列となった。同年は「インスタ映え」が流行語大賞となった年でもあり、見た目のかわいらしさがSNSで話題を呼んだ。 その後、2019年に広島駅の駅ビルに2号店をオープン。駅ビルや駅ナカ施設に出店を重ね、広島以外に東京・埼玉・大阪・岡山も含めてカヌレ専門店として最多の9店を展開する。全店で1日平均、5000~7000個を販売し、客層は男女が半々。カヌレ専門店は女性人気が高いものの、男性のビジネス用途の購入比率が高く、このような客層になっている。特にエキュート品川店が顕著で、新幹線に乗る出張族が東京みやげとして買い求め、ホワイトデーには男性客の行列が恒例化しているという。
カヌレとアイスの組み合わせを提案
その他、2020年12月に名古屋・大須で1号店をオープンしたのが「カヌレとアイス」。その名の通り、カヌレとアイスを2枚看板としたスイーツ専門店だ。1号店が評判を呼び、現在は都内の吉祥寺・浅草・原宿を含めて4店を展開している。 経営しているのはブライド・トゥー・ビーという名古屋のブライダル企業だ。コロナ禍で結婚式の需要が消失。社内にスイーツ部門を持っており、ホテル・レストラン向けケーキなどの卸売を行っていたことから母の日のスイーツ提案としてカヌレを展示会に出品。これが好評だったことから、カヌレ専門店の出店に踏み切った。 もう一つの看板商品であるアイスは、ジャム、生クリームなどカヌレに合うものを試した結果、選んだ。カヌレとアイスを出店する前は、社長自らクーラーボックスにカヌレを詰め、フラワーショップの軒先などを借りて、街頭販売していたという。しかし、アイスの街頭販売は温度管理が難しいことから、店舗を構えることにした。