田宮ら「人生が変わる」瞬間に立ち会う2024年。変わりつつあるチームカラー【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#226】
一軍当落線上の選手が大飛躍
絶対的なレギュラーではなかった選手が、出場機会を得て、今、何者かになろうとしている。今シーズンのファイターズに横溢する空気はそれだ。僕は06年シーズンの森本稀哲、田中賢介を思い出している。ひちょりも賢介も06年開幕の時点ではレギュラーではなかった。2人とも「1軍半」の選手で、何度も挑戦しては1軍の壁にはね返されていた。が、時と所を得て飛躍したのだ。あの年、人生を変えた。ため込んだエネルギーを一気に放って、チームをけん引する役割を果たした。どうだろう、今シーズンの田宮裕涼、郡司裕也、水野達稀を見ててそれを感じないだろうか。 田宮裕涼が規定打席に達し、打率ベストテン上位にいきなり顔を出したのも交流戦直前のエポックだ。僕は田宮に驚いている。今春、開幕スタメンをゲットしたときに当コラムで大きく取り上げたけれど、あれは「2軍で頑張ってた田宮がついに開幕マスクを任されることになった」という感激だ。いわば苦労してきた選手が報われるストーリーだ。捕手はチームで最も競争の激しいポジションの1つだから、チャンスをモノにしたのが嬉しかったのだ。まさかこんなに打つなんて想像しない。僕は鎌ケ谷で田宮のバッティングを見てきたのだ。捕手にしてはいいバッティングセンスを持ってると思っていた。だけど、今の田宮はクリンアップの一角を任されたりする「主力打者」じゃないか。きれいな流し打ちで左中間を割るシーンを見ていると、近藤健介の再来に思える。 僕は正直に自らの不明を恥じる。いやもう、喜んで恥じる。田宮が打率ベストテン上位&盗塁阻止率リーグトップをマークし、オールスター中間発表で捕手部門1位スタートを切るなんて思ってもみなかった。これこそ僕の野球道楽の最上位の愉しみだ。「選手が自分の身の丈をひょいと飛び越える瞬間に立ち会う」。これまで万波、野村が突っ走っていた「18年ドラフト組」の先頭集団に割って入る大活躍だ。野球界ではよく「化ける」と表現をする大飛躍ぶり。しかも、捕手としてまだまだ伸びしろがある。ぜひ、オールスターに出てほしい。本当に「人生が変わる」ってやつだ。